(※写真はイメージです/PIXTA)

2年間の食料消費税ゼロ措置に続き、給付付き税額控除の導入が見込まれています。与野党間では制度導入そのものについて大きな異論はなく、方向性は共有されています。しかし、具体的な制度設計に踏み込めば、「総論賛成、各論に異議あり」という構図が浮かび上がります。財源、給付規模、執行体制――。導入を前に立ちはだかる論点を整理します。

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与野党合意でも残る「総論賛成・各論反対」の構図

給付付き税額控除の導入自体は、与野党間で一定の合意が形成されています。そのため、制度の是非を巡る大きな政治対立は起きにくい状況です。

 

しかし、実際の制度設計に入れば、財源や給付水準、対象範囲など具体論が避けられません。理念としては支持されやすい制度であっても、負担や実務の議論に及べば意見が分かれる可能性が高いといえます。

第1の壁:最大10兆円規模の財源問題

最初の関門は財源です。2年間の食料消費税ゼロには約10兆円規模の財源が必要とされます。その後に導入される給付付き税額控除についても、同様に安定財源の確保が課題となります。

 

国債増発による対応は、財政規律の観点から慎重論が強く、与党内にも反対意見があります。歳出削減か、他税目での増収か、あるいは成長による自然増収を見込むのか――。多くの国民が納得できる説明がなければ、制度は安定的に運用できません。

 

財源論を曖昧にしたままでは、制度全体への信頼性も揺らぎかねません。

第2の壁:給付水準と制度の持続可能性

給付規模の設定も重要な論点です。給付水準を手厚くすれば生活支援効果は高まりますが、その分、財源負担は増大します。逆に水準を抑えれば財政負担は軽減されますが、政策効果が限定的になる可能性があります。

 

財源とのバランスを踏まえ、制度の骨格を早期に固めることが不可欠です。特に、物価動向や所得分布との関係をどう織り込むかは、制度の持続可能性を左右します。

 

給付付き税額控除は一度導入すれば恒久制度となる可能性が高く、単年度の景気対策とは異なる慎重な設計が求められます。

第3の壁:執行インフラと対象範囲の設計

制度設計の各論では、執行面の課題が浮上します。

 

個人住民税の多くは所得税の申告情報に依拠していますが、給付型制度の場合、申告不要者の情報把握が大きな課題となります。とりわけ、所得が一定水準以下で申告義務のない人への給付をどのように正確かつ迅速に行うのかは、制度の信頼性を左右します。

 

また、給付対象を「個人単位」「夫婦単位」「世帯単位」のいずれとするのかも大きな論点です。単位の違いによって公平性や再分配効果は大きく変わります。

 

2026年1月末時点で、マイナンバーカードの普及率は約81%とされています。給付付き税額控除の執行インフラともいえるこの基盤の整備が進めば、資産所得を含む所得把握の精度向上が期待されますが、なお完全ではありません。

海外モデルと既存制度との整合性

さらに、先行する諸外国のどの制度をモデルとするのかという選択も残されています。不正受給への対策も制度の信頼性確保には欠かせません。

 

既存制度との調整も重要です。所得税の各種所得控除、児童手当、生活保護給付などとの関係を整理しなければ、制度間の重複や逆転現象が生じるおそれがあります。再分配の全体像を俯瞰した設計が求められます。

「拙速」か「緻密」か――政策判断の分岐点

最終的な論点は、制度導入を優先して迅速に進めるのか、それとも制度の完成度を高めるために時間をかけるのかという政策判断です。

 

本来、制度改善を前提に導入することは理想的とはいえません。しかし、税制では導入後に一定の見直しが行われる例も少なくありません。重要なのは、拙速との批判を避けつつも、過度な慎重論で停滞しないことです。

 

給付付き税額控除は、日本の税と社会保障のあり方を左右する可能性を秘めています。理念への賛成にとどまらず、制度の実効性と持続可能性をどう担保するのか――今こそ、具体論が問われています。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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