(※写真はイメージです/PIXTA)

「独身税」という言葉がメディアで注目を集めていますが、その実態は税法上の新税ではありません。正式には「子ども・子育て支援金制度」と呼ばれ、医療保険制度のなかで広く国民に負担を求める仕組みです。独身者や子どもを持たない世帯も支払いの対象となる一方、給付は子育て世帯に限られることから、「実質的な独身税ではないか」との批判が生じています。

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独身税の概要

メディアで話題となっている「独身税」の正式名称は、「子ども・子育て支援金制度」です。いわゆる「独身税」を直接規定しているのは税法ではなく、医療保険制度における規定になります。

 

社会保険料は税金そのものではありませんが、給与などから強制的に徴収される点では、負担する側から見ると税金と大きな違いはありません。

 

なお、米国では社会保険料が税として位置づけられており、米国内国歳入庁(IRS)がこれを徴収しています。

 

この「子ども・子育て支援金制度」は、独身か既婚かを問わず、医療保険に加入しているすべての人が支払いの対象となります。

 

一方で、実際に支援を受けられるのは子育て世帯に限られています。そのため、子どもがいない世帯からは、「負担だけを求められ、給付を受けられない」という不満が生じています。こうした背景から、支援の対象外となる独身者などに対する実質的な課税であるとして、「独身税」との批判的な呼び方が広まったのです。

米国所得税の税率表

米国の所得税の税率表は5つに分かれていますが、遺産財団および信託を除くと、主に次の4つに区分されています。いずれの税率表も、税率自体は10%から最高37%まで共通しています。

① 夫婦合算申告および生存配偶者

10%が適用される課税所得の上限は23,850ドルであり、37%は課税所得751,600ドル超から適用されます。

② 戸主

10%適用の課税所得上限は17,000ドルで、37%は課税所得626,350ドル超からとなります。

③ 独身者

10%適用の課税所得上限は11,925ドルで、37%は課税所得626,350ドル超から適用されます。

④ 夫婦別々に申告する者(夫婦単独申告)

10%適用の課税所得上限は11,925ドルで、37%は課税所得375,800ドル超から適用されます。

夫婦合算申告が導入された歴史的背景

米国の夫婦合算申告は、共働き世帯向けの制度であると誤解されがちですが、実際には配偶者の所得がゼロであっても合算申告を行うことができます。税率構造を見れば明らかなように、夫婦合算申告が最も有利であり、結果として独身者の税負担が最も重くなっています。

 

もっとも、米国では日本でいわれるような「独身税」という議論はほとんど見られず、税制が結婚を積極的に奨励していると受け止められているわけでもありません。

 

その背景には、米国の夫婦財産制の違いがあります。東部の多くの州では夫婦別産制が採用されている一方で、西部の旧スペイン領であったカリフォルニア州などでは、夫婦共有制が採られてきました。共有制では、一方のみに所得がある場合でも、その所得は夫婦共有とされ、事実上、夫婦で半分ずつに分けて課税されることになります。

 

こうした州ごとの不公平を是正するため、全国一律で適用できる制度として夫婦合算申告が導入されました。その結果として、制度の「余波」を受けたのが独身者であり、相対的に不利な立場に置かれることになったのです。

 

見方を変えれば、米国の税制は独身者に対して厳しい側面を持っているといえるでしょう。

 

矢内 一好
国際課税研究
首席研究員

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