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長寿社会における「年の差婚」のリスク
厚生労働省が2024年に発表した「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均月額は約14.6万円であり、遺族厚生年金の平均受給額は約8.1万円にとどまるという現状があります。
これは、正治さんのような元公務員で現役時代の報酬が高い層であっても、夫の死後は世帯収入が劇的に減少することを意味しており、特に20歳の年の差がある夫婦にとって「遺族年金と自身の基礎年金」のみで数十年を生き抜くことは、統計的に見て難易度が高いことがわかります。また、日本年金機構の「加給年金・振替加算」の制度解説によると、加給年金(年額約40万円)は配偶者が65歳になると同時に打ち切られるという仕組みがあります。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、女性の2人に1人が90歳まで生存すると予測されており、今回の事例のように「妻が52歳」という若さで70代の夫と生活している場合、夫亡きあとの「資産寿命の枯渇」は、単なる不安ではなく高い確率で発生する構造的なリスクといえるでしょう。
さらに、高額な年金とまとまった貯蓄がある世帯であっても、「加給年金の停止」という制度上の収入減と、「20年以上の年の差」による超長期の遺族生活という時間的リスクが組み合わさった場合、現役時代の感覚に基づいた生活水準の維持は容易に破綻を招きかねません。
老後資金のシミュレーションにおいて、夫の存命期間だけでなく「妻が独りで生きる期間」のインフレや、介護費用までを含めた長期的なキャッシュフロー管理が軽視されている点は、多死社会・長寿社会における大きな課題といえるでしょう。
[参考資料]
厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
日本年金機構「加給年金と振替加算の仕組み」
