「だらしないまま40歳になって、将来どうするの」
「部屋を片づけてって、何回言えば分かるの?」
母の声を聞いた瞬間、由香さん(仮名・40歳)は、思わずため息をつきました。
実家の2階、元は子ども部屋だった6畳の一室。床には脱ぎっぱなしの服、テーブルにはコンビニの空き容器、読みかけの本が山積みになっています。
「分かってるよ、後でやるって」
そう返すのが、いつものやり取りでした。そして“後で”は、たいてい来ません。
由香さん自身も、自分がだらしないことは自覚しています。
「正直、片づけは苦手。仕事で疲れて帰ってくると、もう何もしたくなくて…」
由香さんは派遣社員として事務の仕事を続けています。収入は月20万円前後。一人暮らしをしようと思えば、できなくはありません。
それでも実家に残った理由は、はっきりしていました。
「家賃がかからないのは大きいです。食事も、洗濯も、つくづく親に甘えているなとは思います」
実際、光熱費や食費の多くは両親が負担しています。母が口うるさくなるのも、無理はありません。
母の言葉は、どれも正論でした。
「だらしないまま40歳になって、将来どうするの」
「結婚しなくたっていいけど、せめて生活くらいちゃんとしなさい」
分かっている。反論できない。だからこそ、言われるたびに心が削られていきました。
「怒られている内容が正しいから、余計につらいんです」
片づけられない自分が悪い。実家にいるのも自分の選択。そう分かっていても、毎日のように“指摘”され続けると、家が休まる場所ではなくなっていきました。
母もまた、限界に近づいていったといいます。
「あなたの部屋を見るたびに、私が片づけなきゃいけない気がしてきて気が休まらないのよ」
由香さんがいない間、母が部屋に入ることもありました。それが新たな火種になります。
「勝手に入らないでよ」
「じゃあ、最初からちゃんとして」
親子の会話は、いつも同じところをぐるぐる回ります。
