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20歳の年の差…生活費が下がっても残る不安
正治さんは当初「俺がいなくなれば、食費や交際費などの生活費は下がるはずだ」と考えていました。そこで、自分が亡くなった後の陽子さんの生活費を、現在の30万円から「20万円」まで一気に3割以上も削る前提で再計算しました。
しかし、現実は非情でした。
「俺が逝ったあと、陽子が受け取れる遺族年金と彼女自身の基礎年金を合わせても、税金や保険料を引いた手取りは月15万円程度。生活費を20万円まで切り詰めたとしても、毎月5万円の赤字が出る……」
さらに、家計には不確定要素が残っています。同居する24歳の娘がもし自立できなければ、この予算はさらに厳しくなります。加えて、古くなった自宅の修繕費や、陽子さん自身の将来の介護費を考えれば、月20万円という生活は決して「余裕がある」とはいえません。
30年という「余生」の重圧
「俺が平均寿命の90歳まで生きたとしても、そのとき陽子はまだ70歳。そこから彼女が100歳まで生きるとしたら、あと30年も残っているんだ……」
陽子さんが70歳から100歳まで生きる30年間で、貯蓄は一気に底へ向かいます。そこには「高齢女性の独居」において避けては通れない、最大のリスクが抜け落ちてたのです。
老後にかかる費用が次々と発覚し、正治さんは頭を抱えました。
「平均的な介護費が約600万円と言われても、それは家族がいる場合の話だ。陽子が独りで100歳まで生きて施設に入るなら、1,000万円は見ておかないといけない。この家だって、長く住めばあちこちにガタがくるだろうから、雨漏りや配管の修繕にもお金がかかる……」
「陽子、ごめん……。俺は自分の寿命のことばかり考えていた。最大のリスクは俺がいなくなったあと、お前の人生が30年も残ってしまうことだったんだ」
震える声で告白する正治さんの前で、陽子さんは言葉を失い、ただ涙を浮かべることしかできませんでした。
豊かだと思っていた4,000万円の貯蓄は、20年の年の差が生む「時間」の前では、あまりに心もとなかったのです。
