(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の住まい選びでは、「安心」「安全」「快適」がキーワードになりますが、実際には入居後にさまざまな“ギャップ”が生じることもあります。特に、冬場の寒さや室温管理に対する対応は施設ごとに異なり、体力が低下した高齢者にとっては命に関わる問題にもなり得ます。

「寒い…助けて」深夜2時の着信

「スマホが鳴って、母の名前を見たとき、一瞬で胸がざわつきました。まさかと思いながら出たら、母の声が震えていたんです」

 

そう語るのは、東京都内に住む会社員の中川恵理さん(仮名・52歳)。母・澄子さん(仮名・84歳)は、1年前から地方都市の民間老人ホームに入居しており、月15万円の年金で施設費用をまかないながら、ほぼ自立した生活を送っていました。

 

「“寒い…寒いの…助けて”って、母が泣いていて。慌てて施設に電話したんですが、夜間はスタッフ1人しかいなくて、“順番に対応しています”とだけ言われました」

 

翌日、急遽施設を訪れた恵理さんは、母の部屋が想像以上に冷えていたことに驚きます。

 

「エアコンはついていましたが、設定温度が18度。しかも窓際にベッドが置かれていて、窓からの冷気が直に当たる配置だったんです」

 

職員によれば、「電気代がかさむため、設定温度は一律管理している」との説明。一方、澄子さんは冷えからくる関節痛を訴え、夜間に何度も目が覚めていたとのことでした。

 

「母に“寒いって言った?”と聞いたら、“言っても迷惑そうな顔されるから”と。それを聞いて、涙が出ました」

 

WHO(世界保健機関)の住宅と健康に関するガイドラインでは、冬期の高齢者における血圧上昇に対する影響を考慮し、冬の室内温度の低温側基準として 18℃以上が推奨されています。特に夜間や早朝の冷え込みはリスクになります。

 

実際、住宅や施設の断熱性が不十分な場合、ヒートショックや血圧変動により、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす事例も報告されています。

 

「入居前に見たパンフレット上では、施設は綺麗でしたし、説明も丁寧でした。でも、“冬の夜、どのくらい寒いのか”なんて、想像すらしていなかったんです」

 

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