ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
『データで読み解く「日本経済」のリアル【季節&気象・マインド・おもしろジンクス編】』
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン (編集)
『データで読み解く「日本経済」のリアル【エンタメ・スポーツ・事件編】』
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン (編集)
富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】
八ツ尾順一(著)+ゴールドオンライン(編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
信託の「継ぐ」「分ける」に続く便利な機能「まとめる」とは?
これまで、信託の「継ぐ」機能や「分ける」機能について、どのような活用方法があるのか、具体的に解説してきました。
参照
『認知症となった80代賃貸不動産オーナー、家族は預金を引き出せず…修繕遅れで物件価値が激減→一族全体の問題に! 高齢化社会における「家族信託」の重要性 』
『〈地主の資産防衛戦略〉「収益は地主本人に」「土地は子へ」渡す仕組み…権利の異なる2つの受益権をもつ「受益権複層化信託」の活用術 』
みなさんは日ごろ、意識することもなく同じ種類の財産を複数に分けて保有しています。複数の金融機関に預金口座がある方が多いでしょうし、賃貸物件を複数所有している不動産オーナーの方もいるはずです。そして財産自体、預金や有価証券などの金融資産、自宅や賃貸物件などの不動産といった、複数の種類の財産を所有している方も多いでしょう。
このように複数の資産を所有している場合、所有者本人がそれぞれの対応先に必要に応じた手続きを行っていくことが必要です。「どこに、何が、いくらある、〇〇に貸している」…といった個々の財産の状況を把握し、所有者が対応しているのですが、もしその対応ができなくなったら、途端に困ってしまいます。
所有者に代わり、だれかが対応をしていかなければなりませんが、複数ある財産の情報がまとまっていなければ、対応がもれてしまうこともあります。
そんな困った事態を防ぐためには、資産情報の一覧を作り、そして個々の財産にはどんな対応が必要か、その対応方法も一緒にまとめておくことが必要です。
夫婦それぞれが持つ資産を「まとめて管理」
資産の所有者は、それぞれの判断で資産の管理・処分を行います。夫婦といえども所有する資産に関する手続きは、所有者それぞれが行っていかなければなりません。
夫婦が高齢になり、どちらか片方の判断能力が衰えた場合、夫婦の生活にも大きな影響が出てきます。
たとえば、夫婦のうち判断能力が衰えてしまった方が長生きをし、判断能力があった方が先に亡くなるような事態が生じると、配偶者より相続する資産の管理はできず問題が生じます。
配偶者が残してくれた資産は相続した本人が管理していかなければなりませんが、判断能力を失った者はそれができず、配偶者亡き後の生活に困難が生じてしまいます。
両親の資産を子が「まとめて管理」
高齢夫婦のこのような困難な事態を回避するためには、信託は有効な手段となります。子が、両親それぞれから信託を引き受けて、親の財産に関する判断や手続きを子に任せることができます。
父と子、母と子と信託契約はそれぞれで締結しなければなりませんが、親の資産に関する管理は子にまとまります。2人の資産を1人の子にまとめ、子は、父のため、母のために受託者の義務を果たして父と母のそれぞれの資産管理を行っていきます。
1つの資産を「複数名で所有」することで起きる問題
1つの資産を複数の者で所有している形態でよく知られているのが「不動産の共有」です。これは、共有者が「持分」で不動産を共有する形態で、各共有者は、不動産を持分に応じて使用することができます(民法249条)。また、共有している不動産は、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更を加えることもできません。
もし共有者のうち1人が判断能力低下により判断することができなくなると、共有者の全員の同意ができなくなり、共有不動産の管理や処分に問題が生じます。
共有不動産の管理を家族信託で「まとめる」
共有不動産の問題は、共有者全員が特定の者に信託することで回避することができます。たとえば、高齢夫婦が共有している不動産を子に信託し、子が両親のために管理することで、不動産の修繕等に対応していくことができます。
賃貸不動産を共有している親の信託では、両親のそれぞれが不動産の持分だけ受益権を有するような信託とし、子が賃貸不動産の管理を行い、子は親それぞれの持分の分だけ賃貸収入を給付することができます。管理を「まとめ」、家賃は「分ける」という信託を活用することで、信託の2つの機能を活用し、親が共有する賃貸不動産の管理を行っていくことは、とてもメリットが大きいといえます。
少数株主がいる会社にも活用できる
設立して年数が経過している会社は、複数の親族が株主となっていることがあります。ときには親が亡くなり、複数の子が親の株を分けて相続している場合もあり、少数株主がさらに増えていくことも考えられます。
一見すると、後継者が株式のシェアの多くを持ち、当面の経営は安定しているように見えても、少数株主の問題は将来的なリスクになります。このような少数株主問題にも、信託の「まとめる機能」を活用することができます。
株式を受託者にまとめる
少数株主それぞれが受託者と信託契約を結んで、受託者に株をまとめていきます。受託者は少数株主のために信託財産である株式の管理を行っていきます。
会社への議決権行使は、受託者が行い、受託者が受け取った配当は、少数株主だった者の持株分に応じて給付していきます。少数株式の信託も、共有する賃貸不動産のケースのように、「まとめる」と「分ける」機能を活用していきます。
また、信託した少数株主に相続が生じたときには、その少数株主だった者がもつ受益権を相続させることもできます。相続が生じることでさらに少数株主を増やしてしまうことが問題でしたが、信託していることで、株主は受託者のみで増えません(信託の受益者は増えますが)。
信託のまとめる機能は「出口の設計」が重要
このようにまとめる機能を活用することで、資産の管理、処分を受託者にまとめられるのは大変有効ですが、課題もあります。
信託が終了するときに、残余の信託財産はだれに帰属するのか? この設計をしっかりと考えて取り組む必要があります。複数の受益者がいた信託で、終了した際には、特定の者が信託の残余財産を得るような設計とすれば、その者の課税負担が大きくなります。課税負担が多くなっても、財産承継に問題とならないならよいのですが、出口の税負担は要検討です。
「継ぐ」「分ける」「まとめる」の活用術を検討する
信託の3つの機能を活用することで、資産の管理と承継における課題を解決していくことができます。
これらの機能を活用して何を解決していくのか、家族の財産管理と承継にはどのような課題があるか、まずは、「解決していきたいこと」や「課題」を明らかにして、信託の相談をしていっていただきたいと思います。
相談する先が、そのようなことを明確にしないまま、信託の活用を進めていこうとしたら、要注意です。信託することで、将来に問題が生じてしまうかもしれません。相談するみなさんは、そのようなことも頭の片隅において相談していただけたらと思います。
石脇 俊司
株式会社継志舎 代表取締役
一般社団法人民事信託活用支援機構 理事
