料理なら「素材+料理人の腕」に価格がつくのは当然だが…
レストランは、シェフの味付けを楽しむところです。「素材と調味料を別々に食べても、おなかの中で混ざるのだから同じことだ」というのは、栄養学的には正しいかもしれませんし、自宅で素材と調味料を合わせればシェフの人件費分だけ安く食べられるのでしょうが、あまり気が進みませんね(笑)。
しかし、投資であれば、複雑な投資商品を構築してもらっても、単純な投資商品を自分で購入しても、結果は同じことですから、金融機関の手数料を節約することに大いに意味があるでしょう。複雑な商品ほど「隠れ手数料が割高になりがちだ」ということにも要注意です。
筆者も、プロに手数料を払う場合もありますが、それは例えば投資信託を購入する場合です。「100銘柄の株を100円分ずつ買いたい」と言っても無理なので、投資信託を買わざるを得ないからです。
保険についても同様です。掛け捨ての生命保険は保険料がもったいないからと考えて、貯蓄型の生命保険に加入している人も多いでしょうが、これも掛け捨て保険と国債を別々に購入すればよいのです。貯蓄型は保険会社の隠れ手数料が結構高い場合もあるので、なおさらです。
掛け捨て保険は各社の商品が似ているので、価格競争が激化しがちですが、貯蓄型は他社商品と比較されにくいので、割高な隠れ手数料を設定しやすいからです。
「損失限定の投資商品」を買うべきでない理由
「株式投資信託です。株価が暴落しても、投資額の70%は保証します」という商品があったとしたら、魅力的に見えますね。儲けの上限はないのに、損失には上限があるのですから。しかし、おそらく手数料が高いはずです。
1つの可能性は、投資信託の運用に際して、半分は株で半分は国債で運用しているのでしょう。株価が6割以上暴落すれば顧客に損失を補填しなければなりませんが、そんな可能性は小さいでしょう。
一方で、国債で運用している部分に関しても運用手数料が受け取れるのですから、高い確率で儲かるはずです。そんな投資信託を買うくらいなら、普通の投資信託を半分、国債を半分買えばよいのです。
もう1つの可能性は、投資信託の会社が「プットオプション」を購入しているのでしょう。プットオプションというのは複雑な商品ですが、「株価暴落保険」だと考えていただければよいでしょう。
「家が焼けたら保険金がおりるのが火災保険、株価が暴落したら保険金がおりるのがプットオプション」というわけです。「株価が3割以上下落したら、3割を超えた下落分は保険金としてお支払いします」という保険に加入しておけば、投信会社は安心です。
あとは、通常の投信手数料にプットオプションの代金を上乗せすればよいのです。ところが、実際にはプットオプションの代金より大きな上乗せが行われる可能性も大きいでしょう。
プットオプションの存在を知らなかったり、知っていても自分で取引するのは怖いと思っていたりする投資家にとって、この商品は魅力的で、多少手数料が高くても買うかもしれないからです。そうであれば、普通の投資信託とプットオプションを別々に自分で買う方が得ですね。
妥当な価格が理解できないなら、多分「割高」のはず
「高い金利をお支払いする債券です。ただし、トヨタの株価が半分以下になったら、満期日に現金ではなくトヨタの株券を渡します」という債券があったとします。高い金利に魅了されて購入したくなる人もいるでしょうが、お勧めしません。これも、手数料が割高な可能性が高いからです。
筆者の好きな「相手の立場で考えて」みましょう。トヨタの株価が半分以下になる確率を計算するのはプロの方がはるかに得意でしょうから、「そのリスクを債券購入者が引き受けてくれるなら、いくらまで謝礼を払ってもいいか」を計算して、その金額より相当少ない上乗せ金利を設定するはずです。
そもそも、これは手数料が割高だという問題以上に、「自分が背負わされているリスクがどれくらいか理解できない」ことの方が一層問題なので、筆者ならはじめから検討しないと思いますが。
「ノーベル賞受賞者が複雑な数式を駆使して開発した画期的な新商品」などと言われると魅力を感じてしまう人もいるかもしれませんが、お勧めできませんし、筆者は手を出しません。「デュアルカレンシーリバースモーゲージ債券」などというものも、同様です。隠れ手数料が割高に設定されている可能性が高いですし、それ以前に自分がどんなリスクを背負わされているのか理解できないような商品は、怖くて手が出せませんから。
本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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