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デジタル資産は「無価値」なのか?
本記事では、デジタル資産が抱える現実的な問題について考えてみたいと思います。
アメリカの相続税法では、Facebook(メタ)の投稿やGoogleフォトに保存された写真などは、原則として課税価値を持ちません。しかし、税務上の評価とは裏腹に、遺族にとってはそれが「もっとも大切な遺産」となることも往々にしてあります。
かつて人が亡くなったあとに残るものといえば、写真アルバムや35ミリスライド、手紙、そしてまれにVHSビデオといったものでした。ところが現在では、写真だけでなく動画、音声、メッセージ履歴など、はるかに多くの記録がデジタルの形で残ります。
問題は、それらの多くが、「ユーザー名やパスワードを知らなければ誰もアクセスできない」という点です。存在を知っていても、触れることすらできない――これが、デジタル遺産特有のリスクです。
デジタル遺産を守る「4つ」のステップ
1.デジタル資産の棚卸しをし、「在庫リスト」を作る
では、どうしたら遺族の「もっとも大切な遺産」であるデジタル遺産を守れるのでしょうか。それにはまず、自分がどのようなデジタル資産を持っているのかを具体的に把握することが重要です。
・写真や動画(クラウドか、外付けハードディスクか)
・Facebook、X(旧Twitter)、Instagramなどのソーシャルメディアアカウント
・メールアカウント
・銀行口座やVenmoなどの決済・金融アカウント
なにを持っていて、それはどこにあるのか。この基本情報が整理されていなければ、遺族は対応のしようがありません。まずはデジタル資産の在庫リストを作ることが、すべての出発点となります。
2.遺言書に「デジタル執行人」を指定する
次に推奨されるのが、遺言書に「デジタル執行人(Digital Executor)」を追加することです。これにより、デジタル資産を「誰がどのように管理・処理するのか」を明確にすることができます。
具体的には、ソーシャルメディアやメールアカウントへのアクセス権限を誰に与えるのか、どのデータを保存し、どれを削除するのかを定めます。ただし、各オンラインサービスには独自の利用規約があり、それに従う必要がある点には注意が必要です。
既存の遺言執行人でも対応は可能ですが、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)によれば、「テクノロジーに比較的詳しく、本人の意思を理解している家族や信頼できる人物」を選ぶことを勧めています。
形式的な役割以上に、「きちんと話し合える相手かどうか」が重要になります。
