新税法の中身… “亡くなる5年以内”の不動産は高く評価
そこで、令和8年度の税制改正の議論では、これらの節税スキームを法的に封じるための新ルールが盛り込まれます。
新制度では、亡くなる5年以内に取得した貸付用不動産(アパートや賃貸ビルなど)は、購入価格の80%で評価されることになります。
たとえば10億円で購入した物件の場合、これまでは3億円ほどの評価で済んでいたものが、新税制では8億円ほどで扱われます。つまり、相続の直前に賃貸不動産を購入しても、節税効果はほとんど得られなくなるということです。
「購入後5年以内の死亡」では不利となり、「5年以上生きる」ことでようやく節税効果が発揮される仕組みになります。
ただし、5年以上前から所有している土地に新たに賃貸建物を建てる場合は、対象外とされます。
“小口化不動産”も逃れられず?
注目すべきは、「小口化された不動産商品」にも及ぶ点です。
不動産特定共同事業契約や信託受益権付きの金融商品などは、これまで市場価格の3割程度の評価額で済んでいました。
しかし、新制度では取得時期にかかわらず、これらを「時価」で評価することが明記されています。
つまり、過去に購入した商品も遡って影響を受ける可能性があるということです。
かつて1口100万円で購入し、相続時に30万円で評価されていた資産が、今後は購入価格に近い評価額となる見通しです。この変更は、これまで賃貸不動産を節税対策として利用してきた富裕層や、それを販売してきた企業にとって大きな打撃となっています。
高市政権の“公平税制”路線
政府の基本的な立場は明確です。
「相続税対策は、リスクを取り、努力を重ねて行うものであり、簡単に商品を買って節税できる仕組みは認めない」というものです。
高市政権は、富裕層による過度な節税を抑え、中間層を重視する“公平な税制”を志向しています。
実質賃金の減少や中間層の没落が進むなかで、富裕層への課税強化は社会的公正を保つための施策と位置づけられています。
一方で、「これでは日本から金持ちがいなくなる」「投資意欲が冷え込む」との懸念も根強くあります。
所得の再分配を重視する一方で、経済成長とのバランスをどう取るか――。この課題こそが、新税制の最大の試金石になるでしょう。
節税から“生き方の見直し”へ
今回の税制改正は、単なる“節税封じ”ではありません。
国が掲げる「公平な負担」という理念は、富のあり方や資産の持ち方、さらには人生観そのものにも問いを投げかけています。
これからの時代、問われるのは「どれだけ財産を残すか」ではなく、「どのように使い、どんな価値を生み出すか」ではないでしょうか。
高市政権による税制改正は、単に税を徴収する制度ではなく、日本社会が何を“公正”と考えるのかを映す鏡なのかもしれません。
節税のためにお金を動かす時代から、社会の中でどう生き、どう貢献するかを考える時代へ――。新しい税制は、そんな価値観の転換を私たちに静かに促しています。
奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表
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