「母からのLINE」がきっかけで
都内の商社に勤める55歳の会社員・石田隆一さん(仮名)は、実家のある千葉県でひとり暮らしをする79歳の母に、毎月3万円の仕送りを続けてきました。父を数年前に亡くして以降、ひとりで家を守る母の姿に心配はしていたものの、「年金で足りない分を補う」程度の感覚でいました。
そんなある日、母からこんなLINEが届きます。
「ちょっとお願いがあるんだけど…仕送り、あと少し増やせないかな?」
文面はいつになく丁寧で、誤字もなく整っていたことに、隆一さんは妙な違和感を覚えました。「母はいつももっと口語的な書き方をするのに、まるで誰かに書かされたみたいだ」と。
週末、隆一さんは「なんとなく嫌な予感がする」と急遽、実家を訪ねました。出迎えた母はいつも通りの様子でしたが、リビングのテーブルには「ファイナンシャルプランナー」「資産整理」「後見人制度」と書かれたパンフレットが数冊置かれていました。
不審に思い、さらに家の中を確認すると、母の名前で送られた「高額サプリメントの定期購入契約書」や、「無料相談」の名目で契約させられた高額な“家計見直しサービス”の明細が見つかりました。LINEの文面も、その業者が「こう送れば、息子さんも納得しますよ」と指南したものだったのです。
総務省『家計調査(2024年)』によれば、単身高齢世帯の平均支出は約15万円。一方、公的年金の平均受給額(老齢基礎年金+厚生年金)は女性で月10万~12万円台が多く、年金だけでは生活が成り立たない高齢者は少なくありません。
中でも都市部に住む高齢者は、固定資産税や物価上昇の影響を受けやすく、生活防衛のため“第三者”に家計の相談をすることも。今回のように、巧妙なセールスに付け込まれるケースも増えているのです。
