娘がとった“ある行動”
「もっと早く気づいてあげればよかったです。父の『大丈夫』を鵜呑みにしないで、通帳や明細を一緒に確認していれば……」
智美さんはその後、父の借金を一部立て替え、生活費の一部を毎月送金するようになったといいます。また、市役所に相談して「介護保険」「高齢者向け医療費助成」「住宅修繕補助」などを確認。民間の見守りサービスにも加入しました。
「お金だけでなく、“見守られている”という安心感が、父の気持ちにも変化を与えました。今では通帳をきちんと管理するようになり、生活も安定しています」
年金があっても、すべての高齢者が安定した老後を送れているわけではありません。医療費・物価高・住居修繕・家電の買い替えなど、突発的な支出に備える余裕がない家庭は多く、借金や滞納に発展することもあります。
また、「年金12万円」は決して多くはありません。総務省『家計調査(2024年)』によると、高齢単身無職世帯の平均支出は月約15万円。光熱費や食費の高騰が家計を直撃し、赤字になるケースも少なくありません。
親が高齢になると、心身の衰えとともに家計管理能力も落ちていきます。
「心配ないよ」と言われても、一度は親と一緒に通帳・支出明細・保険内容などを確認し、「現状を一緒に見守っていく」体制を作ることが重要です。もし負担が大きければ、市区町村の地域包括支援センターに相談し、生活支援や成年後見制度の活用を検討するのも一つの方法です。
「もっと早く話してくれれば」――。そう後悔しないためにも、親の“沈黙のサイン”に気づける関係づくりが、これからますます求められています。
