これまでは単に電力を消費してきた人々が、今や自ら電気の生産まで行う「プロシューマー」となってきています。今回は、その現状をお伝えします。※本連載は、東京大学大学院の技術経営戦略学専攻特任教授である阿部力也氏の著書、『デジタルグリッド』(エネルギーフォーラム)の中から一部を抜粋し、電力自由化・インターネット化で大きな転機を迎えている、電力業界の実情を見ていきます。

消費者と生産者を兼ねる生産消費者(プロシューマ―)

電力の世界において、消費者が生産者になるということが現実味を帯び始めています。たくさんの生産者が発電事業者として参入したばかりですが、まさか顧客が競争相手になるとは、考えてもいなかったでしょう。

 

消費者が生産者を兼ねるということはすでに他の業界では多数生まれ始めていて、この本(『デジタルグリッド』エネルギーフォーラム)の中でもプロシューマーと言う言葉を紹介しました。

 

でも、電力の世界でプロシューマーが出てくるということが現実になるとは、あまり思われていません。プロシューマーがすでに活躍している世界はファッションやDIY(Do It Yourself)、3Dプリンティングなどと思われがちです。しかし、実は消費者が行っている無意識の生産に対する協力作業は、全てプロシューマーの仕事とみなすことができます。

 

本来であれば、企業の受付の係、電話対応窓口などが行うべき仕事がインターネットの普及により、消費者が自ら企業の仕事を負担するようになっています。製品に付属すべき取扱説明書を制作し、印刷し、製本し、梱包し、消費者に送り届けるというようなことは、特にIT関連ではもうほとんどなくなりました。製品の取り扱いについては、インターネットから消費者がダウンロードすることにより、企業のかなりの仕事を代わりにやってあげていることになります。

 

米国では、太陽光パネルを電力系統に接続するまで個人がDIYでやってしまうことができます。どこでパネルを買ったらいいか、どう組み立てたらいいか、どうやって運転するのか。すべて情報はネットで取り寄せることができます。電気回路のつなぎ込みですらユーチューブで教えてくれます。

 

電力関連の発電装置や貯蔵装置はとても素人の手には負えない、と思われていましたが、実はそのようなことが簡単にできる新しいネット時代が始まりつつあるのです。

「どこから買うか」だけでなく「どこに売るか」も選択

自分で発電設備を作るだけではありません。

 

さらに続いて起こることは、自分で作った電気をネット上で誰に売るか、自分で決めるようになっていきます。

 

どこから買うかだけではなく、自分で作った電気をどこに売るか、というようなことを個人があるいは法人が行う、このようなプロシューマーの台頭は電力業界にとっては予想外のことになるでしょう。

 

消費者は電気を買うだけだと思い込んでいた世界が一変します。プロシューマーは単純に価格だけで行動をするわけではありません。個人や法人の欲求に基づいて自由な行動を行うのです。

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