今回は、地方経済において電力産業が大きな存在感を示している現状についてお伝えします。※本連載は、東京大学大学院の技術経営戦略学専攻特任教授である阿部力也氏の著書、『デジタルグリッド』(エネルギーフォーラム)の中から一部を抜粋し、電力自由化・インターネット化で大きな転機を迎えている、電力業界の実情を見ていきます。

規模が大きく安定している電力のマーケット

日本の電力消費を電気事業連合会の電力統計情報からデータを拾ってみると、平成27年度の販売電力量は合計で7894億キロワットアワーになります。

東電を100パーセントとした場合、関西と中部電力管内はそれぞれ50パーセントくらい、東北と九州は30パーセントくらい、中国は20パーセント、北海道、北陸、および四国が10パーセントくらいの販売電力量となります。沖縄電力は3パーセントくらいなので上の表には含みませんでした。

 

各社の有価証券報告書から上のような平成27年度営業収益を見ると合計で17兆9163億円となります。

 

東京電力は圧倒的な市場規模を誇っていますが、地方市場も小さくはありません。

 

経済産業省資源エネルギー庁の日本のエネルギーという資料を見ると、2014年度断面で、一般家庭用の電灯料金は25.51円、工場やオフィス用の電力料金は18.86円となっています。しかし、電力量で見ると前者がおおよそ3000億キロワットアワー、後者が5000億キロワットアワーを占めていますので単純平均すると21.35円/キロワットアワーになります。

 

2015年度断面ですと上の表から22.70円/キロワットアワーと計算されます。

 

電気の販売金額ベースで見ると、東京電力は約5.9兆円あります。関西、中部が同規模でそれぞれ2.9兆円と2.6兆円、東北と九州が同規模でそれぞれ1.9兆円と1.7兆円、中国電力は1.2兆円、北海道、北陸、四国が同規模でそれぞれ0.7兆円、0.5兆円、0.6兆円となります。

電力関連の市場規模は、電力自由化で急拡大する!?

地方だけを見てみましょう。

 

北海道、北陸、四国では年間約5000億円から7000億円の売り上げ規模です。地方においてこのマーケット規模は非常に大きいものだと言えるでしょう。しかも、毎年コンスタントに消費が発生する大変安定したマーケットです。

 

中国では1兆2000億円、東北と九州では1兆7000億円から1兆9000億円という売り上げ規模もとても大きいものと言えるでしょう。

 

電力自由化によって、新しい電気事業者がこのマーケットを既存の電力会社から奪うということになると大変なことになります。

 

デジタルグリッドでは、この安定したマーケットを数倍から十数倍に拡大できるということを提案しています。といっても単純に電力需要が数倍から数十倍になるというわけではありません。再エネ電源や分散型電源、サービスプロバイディングなど市場のみならず、電力を地産地消して生まれる製品や、電力の取引量の拡大によって、電力関連のマーケット規模が急速に大きくなっていくだろうということです。

 

これは、夢物語でもなんでもなく、実際に通信の自由化や流通の自由化などで起こった事実です。それを検証するために、次回から少し現状を見つめなおしてみましょう。

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