今回は、どこでどのように作られた電気なのかを識別でき、どの電気を買うのかを自由に選択できるようになれば、電気の購入を通じて地方を応援するということが可能になる将来展望をお伝えします。※本連載は、東京大学大学院の技術経営戦略学専攻特任教授である阿部力也氏の著書、『デジタルグリッド』(エネルギーフォーラム)の中から一部を抜粋し、電力自由化・インターネット化で大きな転機を迎えている、電力業界の実情を見ていきます。

工夫次第では「ふるさと納税」のようなブームにも

電気が識別できるようになり、地方が自然エネルギーの宝庫であることが明らかになってくれば、ふるさとから直接電気を購入するということがブームになるかもしれません。この場合、ふるさとは必ずしも生まれたところでなくてもいいかもしれません。

 

ふるさと納税は、2014年度は全国で389億円でしたが、2015年度は4倍を上回る1653億円となりました。自治体が様々な工夫をした結果と言われています。

 

ふるさと電気も同じように購入量が増大する可能性が十分あります。地方が様々な工夫をすれば、都会で働いている人たちはそれを応援するようになるでしょう。

地域色あふれる特典をつけて電気購入を促進

温泉発電の電気を買ってくれれば、温泉の入浴券がもらえるとか、農産物の廃棄物によるバイオガス発電の電気を買ってくれれば定期的に野菜や果物が送ってもらえるとか、様々なアイデアが生まれてくるでしょう。アイデア次第では、ふるさとへの旅行や観光など、単に電気の売り上げだけではなく、付随した商品やサービスの売り上げが増加していきます。

 

また、風力や太陽光発電には太刀打ちできないようなコスト高の新しい再エネ発電技術も、その発電技術による電気を購入するというような形での支援を受ければ、開発が進むかもしれません。

 

農産物や酪農関係では、もっともっとアイデアが生まれてくるでしょう。例えばワイナリー、お酒、焼酎などの廃棄物によるバイオ発電所見学を、試飲ツアーを兼ねて開催するというのもよいかもしれません。

 

牧場では新鮮なミルクやバター、チーズなどを味わったり、ジンギスカンやバーベキューなどをしながら、自分が購入したり、あるいは投資したりしたバイオ発電所を見学するというようなアイデアも浮かんでくるでしょう。

 

どこから電気を買っているのか、どの発電機が発電した電気なのかなどが、識別できるということが、ふるさと電気を魅力的なものにするでしょう。

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