アパートの賃貸経営を行う場合、まずは金融機関から借り入れを行って物件を購入するのが一般的です。しかしこのような場合、借入れのある収益物件を残して所有者が亡くなると、起こり得るのが「負債をめぐる兄弟間の相続トラブル」です。果たして回避することはできるのでしょうか? 不動産と相続を専門に取り扱う、山村法律事務所の山村暢彦弁護士が解説します。
【関連記事】
築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
負債をめぐる兄弟間のトラブル回避策
一言でいうと、このようなトラブルを防ぐには「遺言書作成が必須」といえます。遺言書を作成しておけば、遺留分等の分け方に不満が残った場合の係争は残りますが、基本的にはアパートの所有が誰かを確定することができます。
すなわち、所有権の帰属が決まり、賃料収入から融資の返済ができることになります。これは融資の返済の観点からだけではなく、アパート事業の運営の継続のためにも遺言書は必須なのです。
たとえば、遺産分割で係争中に、アパートから退去者が出たとします。通常は、クリーニングなど原状回復をかけて、新しい入居者を決めなければなりませんが、遺産分割でいがみあっていると全員の同意が取れないケースがあります。そうすると、新規の入居者募集ができず、余計にアパートの収益が減ってしまうという事態に陥ってしまいます。
つまり、アパート経営を行っている以上は、遺言書で確定的に不動産の所有権を定めておかないと、①金融機関のローン返済と、②入退去等のアパート経営という2点の観点から、トラブルが生じてしまうので、注意が必要です。
「相続対策」まで準備するのがアパート経営者の責任
相続対策までは考えていないというアパート経営者の方からよく聞くのは、「資産を残すのだから、あとは残っている人でうまくやってくれ!」という声です。ただ、この声には若干の無責任さがあるのではと思います。
仮に、会社経営をやっていた方から「会社を残すから後は好きにやってくれ」と聞くとどうでしょう。「ちゃんと引継ぎやってくれよ!」といわれてしまってもおかしくはありません。
アパート経営も同じなのです。どうしても「不動産投資」という言葉から、事業として考えていない方が多々いらっしゃるのですが、あくまで「不動産投資」というのは、「大家業」「不動産賃貸業」という事業なのです。
そのため、今回ご紹介したように、少なくとも金融機関のローン返済と入退去等の事業継続という観点から、必要な引継ぎ、すなわち遺言書の対策は必須ではないかと思うのです。
近年では、融資の際に団体生命信用保険を付して、所有者が死亡すると借金が残らないという保険を付しているケースもあります。しかし、この保険はすべての物件につけられるわけではなく、実際は相続対策ができていない物件がほとんどです。遺言書に加えて、この団体生命信用保険についても見直してみるとよいと思います。
山村 暢彦
山村法律事務所
弁護士
【関連記事】
築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数7名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
弁護士法人 山村法律事務所
神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階
電話番号 045-211-4275
神奈川県弁護士会 所属
山村法律事務所ウェブサイト:https://fudousan-lawyer.jp/
不動産大家トラブル解決ドットコム:https://fudousan-ooya.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=1098
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載入口戦略から出口戦略まで完全網羅「堅実なアパート経営」のススメ