富裕層の資産管理や運用を専属でサポートする金融の専門家「プライベートバンカー」。顧客の“金庫番”として、投資・相続・税務・事業承継を含め、富裕層の資産形成に伴走するプライベートバンカーたちは、具体的に富裕層に対してどのような提案やアドバイスを行っているのでしょうか。投資の基本理論を踏まえ、メガバンク出身の公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
リスクとリターンの基本…資産戦略が投資成果を左右する
投資で得られる利益(リターン)は、将来得られる利益(インカムゲイン+キャピタルゲイン)を投資額で割って算出します。一方、投資には必ず不確実性(リスク)があり、これは値動きの大きさで測定されます。
リスクとリターンはトレードオフの関係にあり、リスクを取らなければ大きな利益は期待できません。安心だけを求めて高いリターンを得ることはできず、「ローリスク・ハイリターンの商品は存在しない」というのが基本原則です。
したがって、投資の世界では「分散投資」が重要とされます。複数の資産に分けて投資することで、リスクを抑えながら効率的に利益を狙えるためです。
この考え方を理論化したのが、アメリカの経済学者ハリー・マルコビッツの「現代ポートフォリオ理論(MPT)」です。さらに、ウィリアム・シャープが発展させた「資本資産評価モデル(CAPM)」では、リスクのない資産とリスク資産をどう組み合わせるべきかが体系化されています。
彼らの理論のなかには、分散投資に役立ついくつかの重要な概念があります。
・効率的フロンティア
……最も効率的なリスク・リターンの組み合わせの集合
・接点ポートフォリオ
……リスク資産のなかでもっとも効率的な組み合わせ
・トービンの分離定理
……投資家は接点ポートフォリオと無リスク資産の比率のみ決めればよいという考え方
CAPMでは、資産の期待リターンを次の式で表します。
期待リターン=無リスク資産のリターン+(市場リターン−無リスク資産リターン)× β
β(ベータ)とは「市場の動きに対してどれくらい敏感か」を示す指標です。ベータが大きい資産は値動きが激しく、リスクもリターンも大きくなりやすいといえます。
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=142
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