(※写真はイメージです/PIXTA)

苦労して育ててくれた親に、少しでも楽をしてほしい。そんな思いで毎月仕送りを続ける子どもたちは少なくありません。しかし、親にとってそのお金は「使うもの」ではなく、「守るもの」になることも。本記事では、Aさんの事例とともに、相続において最も重要なことについて、社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が解説します。

姉妹それぞれの名前が記された2冊の通帳

タンスの奥には2冊の通帳がありました。Aさん姉妹は恐る恐る開いてみると、見開きのところにAさん姉妹のそれぞれの名前が記入されていたのです。

 

記帳された最初の日付は30年前。そこには、6ヵ月分、あるいは1年分と、姉妹が振り込んでいたお金がそのまま入金されていました。母は仕送りを引き出すことなく、それぞれの通帳に預けていたようです。

 

手つかずの通帳の残高は合計で600万円以上ありました。

 

「お母さんは、私たちの仕送りをまったく使うことなく通帳にいれていたんだ……」

 

気丈に振舞い続けた母らしいと、2人で涙を流しました。ほかに預金等はみつかりませんでした。最後まで子を想い続けた母の優しさに触れ、Aさん姉妹は「残った身内は姉妹2人だけだから、連絡はまめにしよう」と、母の想いを大事に過ごそうと誓い合いました。

 

相続では、一つボタンを掛け違えてしまうと、親子、きょうだいでも争族につながることがあります。揉めない有効手段として、エンディングノートや遺言書、付言などがありますが、日ごろから「助け合ってほしい」と想いを伝えていたAさんの母の想いは、着実に姉妹に伝わっていたようです。

 

参考

総務省統計局:2024年(令和6年)平均結果の概要 65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 -2024年
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2024.pdf

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

共同代表

 

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