姉妹それぞれの名前が記された2冊の通帳
タンスの奥には2冊の通帳がありました。Aさん姉妹は恐る恐る開いてみると、見開きのところにAさん姉妹のそれぞれの名前が記入されていたのです。
記帳された最初の日付は30年前。そこには、6ヵ月分、あるいは1年分と、姉妹が振り込んでいたお金がそのまま入金されていました。母は仕送りを引き出すことなく、それぞれの通帳に預けていたようです。
手つかずの通帳の残高は合計で600万円以上ありました。
「お母さんは、私たちの仕送りをまったく使うことなく通帳にいれていたんだ……」
気丈に振舞い続けた母らしいと、2人で涙を流しました。ほかに預金等はみつかりませんでした。最後まで子を想い続けた母の優しさに触れ、Aさん姉妹は「残った身内は姉妹2人だけだから、連絡はまめにしよう」と、母の想いを大事に過ごそうと誓い合いました。
相続では、一つボタンを掛け違えてしまうと、親子、きょうだいでも争族につながることがあります。揉めない有効手段として、エンディングノートや遺言書、付言などがありますが、日ごろから「助け合ってほしい」と想いを伝えていたAさんの母の想いは、着実に姉妹に伝わっていたようです。
参考
総務省統計局:2024年(令和6年)平均結果の概要 65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 -2024年
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2024.pdf
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
共同代表
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