(※画像はイメージです/PIXTA)

金市場は、FRBの利下げや中央銀行の旺盛な購入、ETFへの資金流入など複数の強気要因に支えられ、価格の下方リスクを抑えつつ高水準を維持しています。その一方で、アジアでの高値による現物需要の抑制や米国経済の突出した成長によるドル高リスクなど、弱気要因があるのも事実です。11月の金市場動向から、高騰を支える要因と2026年の展開についてみていきましょう。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの4名のストラテジストによる共同執筆です。

中央銀行による金購入は新興国がけん引

中央銀行は第3四半期も構造的な金需要の源泉となり、価格上昇にもかかわらず購入は堅調を維持しました。これは金価格の下限水準を押し上げ、価格の下方変動リスクの抑制に寄与しています。

 

公的部門による金購入は、2四半期連続の需要減速を経て再加速しました。約220トンという購入量は、前四半期(172トン)比で28%増、5年間の四半期平均(207トン)を6%上回り、前年同期比(199.5トン)では10%増となりました※12。第3四半期末までの年初来購入量は634トンに達し、過去3年間の同時期を下回るものの、2022年以前の年間平均400~500トンを大幅に上回る水準となりました※13

 

新興国中央銀行は引き続き需要全体に大きく貢献しています。カザフスタン国立銀行が当四半期最大の買い手となり、金準備は18トン増加し324トンに達しました※14

 

ブラジル中央銀行は2021年7月以来の購入再開に踏み切り、9月に15トン追加して総保有量は145トンに増加しました※15。また、トルコ中央銀行は第3四半期に7トンを購入し、総保有量を641トンに拡大しました※16

 

2025年通年の購入量は、過去3年間に見られた約1,000トンの水準には届かず、従来からの当社予想である約900トン近くになる見込みですが、それでも少なくとも1960年代以降で上位4番目の年間購入量となります※17

 

価格上昇にもかかわらず第3四半期に購入が回復したことは、公的部門の需要が戦略的性質を持つことを改めて示しています。実際、年初来最大の買い手であるポーランド国立銀行は、準備資産に占める金の目標比率を20%から30%に引き上げました※18

 

こうした記録的な水準の中央銀行需要が常態化する一方で、金ETFへの資金流入や民間向け金地金・金貨の購入が残存需要ギャップの一部を吸収しています。

FRBの利下げは金保有者に“追い風”

最新の米国インフレ指標では、9月のコアCPIと総合CPIはともに予想をわずかに下回る緩やかな鈍化が確認されました※19

 

その結果、FRBは10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を25ベーシスポイント引き下げ4.0%とし、2026年にもさらなる利下げ余地を残す長期的な緩和サイクルを継続しています※20

 

政策当局者はまた、量的引き締めを12月1日に終了する方針を示唆しました。これにより流動性が供給され、長期金利に下押し圧力が加わる可能性があります※21

 

金利引き下げと量的引き締めの終了が相まって、他の条件が同じであれば、米国債イールドカーブ全体において実質金利が低下し、現金を保有する魅力は減退するでしょう。実質金利が低下するにつれ、金を保有する機会費用は減少します。

 

これは、FRBが持続的な緩和局面に入った可能性があるなかで、金に対するエクスポージャーを戦略的に維持または増加させることが有利になる環境を下支えします。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。

 

 

Aakash Doshi(Head of Gold Strategy)、Mohanad Abukhalaf (Gold Strategist)、Diego Andrade(Senior Gold Strategist)、アーロン・チャン(ゴールド・ストラテジスト)

 

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〈ご留意事項〉
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。

本稿に示されている見解は2025年10月31日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。

提供された情報は、投資助言に該当するものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。本情報は、有価証券の購入の勧誘または売却の申出とみなされるべきものではありません。本情報は、投資家の特定の投資目的、戦略、税務上の地位または投資期間を考慮したものではありません。ご自身の税務・財務アドバイザーにご相談ください。

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コモディティへの投資は大きなリスクを伴うため、すべての投資家に適した投資対象ではありません。

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本資料は、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが作成したものをステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が和訳したものです。内容については原文が優先されることをご了承下さい。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第345号 加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 投資信託協会、日本証券業協会

© 2025 State Street Corporation. 7620090.10.2.APAC.RTL Exp date:11/30/2026

〈注記〉
※1 Source: ICI, as of 9/30/2025.
※2 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※3 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, data sourced from 2005-2024.
※4 Source: International Monetary Fund: 2025 Global Debt Monitor, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※5 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※6 Source: International Monetary Fund: 2025 Global Debt Monitor, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※7 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※8 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※9 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※10 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※11 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※12 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※13 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※14 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※15 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※16 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※17 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※18 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※19 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※20 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, as of 10/31/2025. Note 4% is Federal Funds Target – Upper Bound.
※21 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, as of 10/31/2025.

★1 出所:国際通貨基金(2025年世界債務モニター)、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2025年10月31日時点
注:チャートの分析方法については用語集をご覧ください

★2 出所:ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2025年10月31日時点

★3 出所:メタル・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2025年10月31日時点

〈用語集〉
今月のチャートの分析方法
先進経済圏には、ユーロ圏、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国が含まれます。新興市場・開発途上国には、ブラジル、インド、南アフリカ、中国を除く新興市場・開発途上国が含まれます。本稿で提示される中国の公的債務データは、IMF職員が作成した対 中国第4条協議報告書における推計値よりも一般政府の範囲が狭くなっています(両推計値の調整についてはIMF 2023を参照)。中国の民間部門債務には、地方政府の資金調達プラットフォームである地方融資平台の債務の1/3およびその他の予算外政府基金債務が含まれます。注:10年単位(例:1970年代)を示す列の数値は、当該10年間(例:1970-1979年)の平均債務水準を示します。グループ集計値は、債務の時系列統計を少なくとも1種類報告している国をすべて用いて算出されています。総債務統計と公的・民間債務内訳との整合性を確保するため、当該債務時系列データを一度も報告したことのない国については、グループ集計値算出時に欠損債務データはゼロとして扱います。過去に債務時系列データを報告したことがあるものの近年報告がなされていない国については、直近報告以降は名目債務残高が変化していないと仮定して欠損値を補完しています。

中央銀行
国または国家連合のために、貨幣および信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関。

COMEX
コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場。

金のスポット価格
スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。

LBMA午後金価格(米ドル/オンス)
LBMA金価格はIBAが独立して管理し、価格算出のためのオークション・プラットフォームを提供していますが、知的所有権はLBMAに帰属します。プラットフォームは、電子的に取引および監査が可能で、証券監督者国際機構(IOSCO)の金融ベンチマークに関する原則に沿って設計されています。

実質金利
インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。

米連邦公開市場委員会(FOMC)
米連邦準備制度内にある委員会で、金融政策を決定します。

脱ドル化
各国が国際貿易、金融取引、外貨準備における米ドル依存を減らすプロセスで、多くの場合、その背景には地政学的動機、制裁リスク、自国通貨の主権確保の取り組みがあります。

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