(※画像はイメージです/PIXTA)

金市場は、FRBの利下げや中央銀行の旺盛な購入、ETFへの資金流入など複数の強気要因に支えられ、価格の下方リスクを抑えつつ高水準を維持しています。その一方で、アジアでの高値による現物需要の抑制や米国経済の突出した成長によるドル高リスクなど、弱気要因があるのも事実です。11月の金市場動向から、高騰を支える要因と2026年の展開についてみていきましょう。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの4名のストラテジストによる共同執筆です。

増え続ける「世界の借金」に適応する金

◆世界の債務が増えるほど、金の存在感は強まる

1970年代以降、法定通貨への移行、財政政策の積極化、金融のグローバル化により、先進国・新興国ともに債務水準が急上昇してきました。このように信用創造が制約なく行われるシステムのもとでは、市場による抑制効果も限定的です。

 

このマネーと債務が複合的に拡大する環境下で、金は価値を維持するための重要な基盤として役割を果たし続けています。

 

世界の債務は2020年に対GDP比で約258%とピークに達し、現在も235%を上回る水準で推移しており、コロナ禍前の平均水準を大幅に上回っています※4。債務の対GDP比率が今後3~4倍に膨張するリスクがあるなかで、財政の持続可能性は限界に近づいている可能性があります。

 

この構造的なレバレッジ依存は長期的な財政のひっ迫を示唆しており、債務の貨幣化(財政ファインナンス)や通貨価値下落の懸念に対する戦略的ヘッジ手段として金の魅力を高めています。

 

◆米国政府債務、過去最高…ますます高まる「金」需要

米国政府債務の利払いコストは2000年以降に2倍以上に膨らみ、今年は過去最高の1.1兆ドルに達しました※5。平時において米国の財政赤字の対GDP比率が5%を超えるのは現代金融市場では前例がなく※6、投資家が厳しい視線を向けると同時に、金のような財政リスクに対する代替ヘッジ手段への需要を高めています。

 

現在の財政政策は依然として拡張路線にあることから、2026年に向けて、金はこうした状況から恩恵を受け続けると見込まれます。特に、近い将来に債務・財政赤字問題の解決策が議論される見込みがない状況ではなおさらでしょう。

 

[図表2]世界の金ETFへの資金流出入トレンド★2

金ETF流入は過去最高ペース…2026年も“拡大余地”あり

10月は、金ETFに約82億ドルの資金が流入しました※7。第3四半期の記録的な流入額260億ドル(2020年第2四半期の従来の四半期最高額240億ドルを更新)に続く流れで※8、年初来の累計流入額は現在約720億ドルに達し、2020年通年実績をすでに上回っています※9

 

とはいえ、金の保有量から見ると拡大の余地があります。現在のETF積み増しサイクルは2024年5月に始まり、78週が経過した時点で保有量は3,887トンで、812トン増加しています(2020年11月のピークを42トン下回る)※10

 

参考までに、過去2回の長期サイクルは2008年終盤~2012年終盤(221週間、1,823トン増加)と2016年初頭~2020年終盤(253週間、2,341トン増加)でした※11

 

現在の局面は、両サイクルと比べると、期間の長さにおいてそれぞれ35%、31%、増加量においてそれぞれ45%、35%に過ぎません。もし例年どおり11月~12月の季節要因による弱含みがなければ、ETFの総保有量が過去最高を更新する可能性もあります。

 

[図表3]中央銀行による金の年間需要★3

 

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〈ご留意事項〉
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。

本稿に示されている見解は2025年10月31日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。

提供された情報は、投資助言に該当するものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。本情報は、有価証券の購入の勧誘または売却の申出とみなされるべきものではありません。本情報は、投資家の特定の投資目的、戦略、税務上の地位または投資期間を考慮したものではありません。ご自身の税務・財務アドバイザーにご相談ください。

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本資料は、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが作成したものをステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が和訳したものです。内容については原文が優先されることをご了承下さい。

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© 2025 State Street Corporation. 7620090.10.2.APAC.RTL Exp date:11/30/2026

〈注記〉
※1 Source: ICI, as of 9/30/2025.
※2 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※3 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, data sourced from 2005-2024.
※4 Source: International Monetary Fund: 2025 Global Debt Monitor, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※5 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※6 Source: International Monetary Fund: 2025 Global Debt Monitor, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※7 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※8 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※9 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※10 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※11 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※12 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※13 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※14 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※15 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※16 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※17 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※18 Source: World Gold Council, as of 10/31/2025.
※19 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, as of 10/31/2025.
※20 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, as of 10/31/2025. Note 4% is Federal Funds Target – Upper Bound.
※21 Source: Bloomberg Financial L.P., & State Street Investment Management, as of 10/31/2025.

★1 出所:国際通貨基金(2025年世界債務モニター)、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2025年10月31日時点
注:チャートの分析方法については用語集をご覧ください

★2 出所:ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2025年10月31日時点

★3 出所:メタル・フォーカス、ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2025年10月31日時点

〈用語集〉
今月のチャートの分析方法
先進経済圏には、ユーロ圏、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国が含まれます。新興市場・開発途上国には、ブラジル、インド、南アフリカ、中国を除く新興市場・開発途上国が含まれます。本稿で提示される中国の公的債務データは、IMF職員が作成した対 中国第4条協議報告書における推計値よりも一般政府の範囲が狭くなっています(両推計値の調整についてはIMF 2023を参照)。中国の民間部門債務には、地方政府の資金調達プラットフォームである地方融資平台の債務の1/3およびその他の予算外政府基金債務が含まれます。注:10年単位(例:1970年代)を示す列の数値は、当該10年間(例:1970-1979年)の平均債務水準を示します。グループ集計値は、債務の時系列統計を少なくとも1種類報告している国をすべて用いて算出されています。総債務統計と公的・民間債務内訳との整合性を確保するため、当該債務時系列データを一度も報告したことのない国については、グループ集計値算出時に欠損債務データはゼロとして扱います。過去に債務時系列データを報告したことがあるものの近年報告がなされていない国については、直近報告以降は名目債務残高が変化していないと仮定して欠損値を補完しています。

中央銀行
国または国家連合のために、貨幣および信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関。

COMEX
コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場。

金のスポット価格
スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。

LBMA午後金価格(米ドル/オンス)
LBMA金価格はIBAが独立して管理し、価格算出のためのオークション・プラットフォームを提供していますが、知的所有権はLBMAに帰属します。プラットフォームは、電子的に取引および監査が可能で、証券監督者国際機構(IOSCO)の金融ベンチマークに関する原則に沿って設計されています。

実質金利
インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。

米連邦公開市場委員会(FOMC)
米連邦準備制度内にある委員会で、金融政策を決定します。

脱ドル化
各国が国際貿易、金融取引、外貨準備における米ドル依存を減らすプロセスで、多くの場合、その背景には地政学的動機、制裁リスク、自国通貨の主権確保の取り組みがあります。

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