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「住所不定」の人に、税金はかかる?
日本の住民税は、毎年1月1日時点で日本国内に住所を有する人に対して、市区町村が翌年度に課税する仕組みになっています。
では、ニュースなどで「住所不定」と報道される人物には、住民税はかかるのでしょうか? なお、ここでいう「住所不定」とは、市役所から住民票を抜いたまま、実際に住んでいる市区町村に転入届を出していない人のことを指します。
この場合、住民税は課されないものの、国民健康保険への加入資格も失われるため、病院を受診する際は医療費を全額自己負担することになります。
ずいぶん前の話ですが、この「住所不定」のしくみを逆手に取った、国際税務に精通していると思われる人物による巧妙な脱税事件がありました。
毎年住民票を抜き、アメリカに「ペーパー移住」
A氏は、毎年年末に住民票を抜く際、「住所不定」とならないよう、転出先を「アメリカ」として届け出ていました。実際には年に1〜2回しか渡航しておらず、形式上は「アメリカ居住者」となっていたものの、実態としては日本国内に居住していました。
アメリカには、日本のような住民票や戸籍制度は存在しません。つまり、日本とアメリカの住民登録制度の違いを利用し、あたかもアメリカに居住しているかのように装っていたのです。
「著作権使用料」も納税回避
さらに注目すべきは、A氏が所有する著作権使用料の扱いです。通常、著作権使用料を個人が受け取る場合、日本国内では源泉徴収が義務づけられています。外国人に支払う場合も同様で、受け取る側が脱税できる余地はほとんどありません。
ところが、A氏は日米租税条約の仕組みも熟知していました。条約第12条には、「日本で発生した使用料であっても、受け取る人がアメリカの居住者であれば、その課税はアメリカのみが行う」と定められています。
つまり、受け取る側が「アメリカ居住者」として扱われれば、日本側では源泉徴収の必要がなくなります。日本企業が支払う著作権使用料であっても、相手がアメリカ居住者であることを証明できれば、日本での課税が免除される仕組みなのです。
事件発覚で浮き彫りになった税務当局の「甘さ」
最終的にA氏は摘発されましたが、この手口が長年見過ごされてきた背景には、税務当局の確認体制の甘さがありました。
米国税法上、居住者と認められるためには「Substantial Presence Test(実質的滞在基準)」に基づき、当年および過去2年間の滞在日数の合計が183日以上であることが求められます。さらに、適切なビザでの滞在も条件となります。
したがって、早いうちに外務省や米国の税務当局に照会していれば、形式的に「アメリカ居住者」とされていたA氏の実態は、簡単に見破ることができた可能性があります。
この事件は、国際税務の知識を悪用した巧妙な脱税の典型例でしょう。国境をまたぐ所得への課税や租税条約の適用には、高度な専門知識が求められます。税務当局による確認体制の強化がいかに重要かが改めて示された事例といえます。
奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表
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