民間部門は活発化、財閥主導で再エネ投資が加速
S&Pグローバル・レーティングの報告によれば、フィリピンの財閥企業は今後10年間で、再生可能エネルギープロジェクトに約280億ドル(約1.65兆ペソ)の大規模投資を計画しています。これは、フィリピンとベトナムの主要ビジネスグループ全体による総額1,850億ドル(約10.9兆ペソ)規模の投資サイクルにおいて重要な位置を占めます。過去10年間の総資本支出の約2.5倍という規模が、その野心的な姿勢を示しています。フィリピンの財閥企業は、中核事業が成熟期を迎える中、長期的な成長を目指して再生可能エネルギーなどの新興セクターへの移行を加速させています。
S&Pの推定では、フィリピンの複合企業が今後10年間に計画する総資本支出(Capex)のうち、再生可能エネルギーが約2割を占めます。この結果、2030年までにこれらトップ企業グループが、国内の再生可能エネルギー総容量の4〜5割を担う可能性があるといいます。
財務規律の点において、フィリピン企業はベトナムの同業他社に比べ強固な基盤を持っています。過去5年間、設備投資の約55%を営業キャッシュフローや事業売却によって賄っており、2024年時点での平均総負債対EBITDA比率は1倍未満に抑えられています。また、フィリピンの銀行および債券市場は発展しており、多様な投資家基盤に支えられた柔軟かつ長期の資金調達が可能な点も大きな強みです。
一方、ベトナムの複合企業は短期の国内債務への依存度が高く、借り換えリスクや流動性リスクに脆弱性を抱えています。さらに、フィリピン企業は純利益の80%以上を中核事業から得ており、新規事業への支出が総支出の30%にとどまっているのに対し、ベトナムでは新規事業への支出が40%に達しているにもかかわらず、多くの新規事業が未だ損失を計上しているため、フィリピン企業の収益力の高さが際立っています。
S&Pは、この大規模な投資計画が、フィリピンとベトナムの複合企業のレバレッジを従来の基準以上に押し上げる可能性があると指摘しています。そのため、今後10年間は、資本規律、資金調達の柔軟性、およびガバナンスの強さが試される期間になると結論付けています。グループ間の相互保有や保証によるシステミック・リスクを鑑みても、透明性の向上は、両市場の企業にとって極めて重要であるとされています。
