(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代。私たちは「お金」の備えは考えますが、「孤独」への備えはできているでしょうか。 配偶者や友人を失ったあとも続く「長い老後」は、健康な人ほど「支出」と「孤独の時間」が長引くという逆説を孕んでいます。本記事では、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナー・波多勇気氏が、佐伯ハルさん(仮名)の事例とともに、単身高齢者の現実的な老後への備え方を提案します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

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80代ひとり暮らし、通帳残高17万円

佐伯ハルさん(仮名/83歳)。都内にある築40年の集合住宅でひとり暮らしです。3年前に夫を亡くし、娘は独立。娘は同じ都内に住んでおり、月1回ほど会います。

 

ハルさんの収入は年金のみ。国民年金に遺族年金がわずかに上乗せされ、手取りは月8万円台。今月の通帳残高は17万円。固定費は家賃4万2,000円、共益費5,000円、電気ガス水道で1万円強、通信費4,000円、医療費の自己負担は月平均3,000円ほど。食費と日用品は月2万円台に抑えています。

 

「体は元気なんですよ。階段もまだ上れるし、買い物も自分で行けます」「でもね、ひとりの食卓って、静かすぎるの。テレビをつけても、音だけが空っぽに聞こえるのよ」

 

先月、仲の良かったサークル仲間の友人が相次いで2人亡くなりました。週1回通っていた卓球も気力が続かず、最近は欠席気味に。人との接点が減ると、支出は減りそうに思えますが、実際は違います。冷蔵庫の在庫管理が甘くなり、食材を無駄にしてしまう。外出が減ると暖房の使用時間が増え、光熱費はじわりと上がる。粗大ごみの解体や電球の交換のような小さな代行費用が、予想外の臨時出費として積み上がります。

 

「この17万円って、心臓みたいなものなの。残高が減るたびに、鼓動が弱くなる気がして」

 

ハルさんは通帳をそっと閉じました。

 

ファイナンシャルプランナーとして同席した筆者は、まず日常の数字を一緒に書き出しました。収入8万円台、基礎固定費は6万円台、変動費を1万5,000円で回しても、予備費は月に数千円しか残りません。予期せぬ修理や冠婚葬祭が来れば、通帳の残高は一気に痩せます。健康は強みです。しかし、健康ゆえに支出の期間が長くなるという逆説が、ここにあります。

 

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※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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