制度の仕組みと“利用者とのギャップ”
金融庁や厚生労働省が推進する「資産形成支援策」は、制度自体は優れていても、“いつ・誰が・どう使うか”が問題になります。
特に、
●iDeCoは60歳以降でないと引き出せず、所得控除などのメリットは退職後の無職世帯には活かしづらい
●つみたてNISAは非課税である一方、元本保証はなく、売却タイミングが心理的に難しい
●外貨建て保険は為替変動・手数料などの複雑性が高く、想定通りのリターンにならないことも多い
こうした制度の“落とし穴”を知るには、ある程度の知識と冷静な判断力が必要です。
「退職後って、どこか不安で、“何かしなきゃ”って気持ちになるんです。でも、その焦りが一番危ない。冷静なうちに備えておくべきでしたね」
そう語る田村さんは、現在は積立額を減らし、年金収入の範囲で暮らす生活に戻しました。損失は確定していないとはいえ、「もう投資に気を揉むのは疲れた」とも漏らします。
「自己責任」という言葉は簡単ですが、背景には“情報の非対称性”も存在します。セミナーや営業で得られる情報は必ずしも中立ではなく、契約時に十分なリスク説明が行われていないケースもあります。
今後、金融教育や制度の設計が進んでも、利用者側にとっては「老後の不安につけ込まれない力=金融リテラシー」が欠かせません。
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