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猫2匹と穏やかに暮らす母が感じた娘の異変
金沢で猫2匹と暮らす70歳の東裕子さん(仮名)は、月12万円の年金で慎ましくも穏やかな生活を送っています。2匹の猫は、かつて自宅のまわりをうろついていた野良猫。東京で暮らす娘・彩夏さん(35)に相談すると「放っておけば繁殖するばかりだから去勢手術をして家猫にしよう」と提案。家猫として迎え入れました。
「言い出したのは私だから」とキャットフードやトイレシート代、保険料などは彩夏さんが負担してくれています。
「私の暮らしを心配してくれて、毎月、通販でまとめて送ってくれるんです。電話で『そろそろ餌が切れそうよ』と伝えると、翌日には段ボールが届く。そんなやり取りも、母娘の大切な時間でした」
けれど、最近になって小さな変化がありました。いつも送られてくるキャットフードの銘柄が、前よりも安価なものに変わっていたのです。
猫たちは新しいフードも変わりなく食べ、むしろよく食べるようになったのですが、裕子さんの胸には小さな不安が芽生えました。
新幹線で駆けつけた母が見た光景
「どうしたのかしら?」と不安を覚えた裕子さん。「たかがキャットフード、されどキャットフード……」電話で尋ねても、「大丈夫」と笑うだけの娘。胸騒ぎが消えず、思い切って新幹線で東京へ向かいました。
週末、都心から少し離れた娘の家を訪ねると、彩夏さんは3歳の娘をあやしながら、慌ただしく動き回っていました。
「最近、寝不足で……」と苦笑いする娘の顔には、疲れの色がにじんでいます。話を聞くと、初めての育児に加え、時短勤務と家事で毎日が精一杯。
「夫も協力してくれるけれど、私の中で“ちゃんとしなきゃ”という気持ちが強くて」と、涙を浮かべる彩夏さん。
さらに、世帯年収は700万円ほどあるものの、物価高や教育費の不安から「少しでも節約しなければ」と思い詰めていたといいます。
「猫のフードも、ほんの少し節約のつもりだったの。とはいえフードを変えたことで猫の健康状態が悪くなったら本末転倒なので、口コミを見て、ちゃんとしたものを選んだつもりでした。でも私も何も言わなかったので母に心配をかけてしまって……」と、彩夏さんは肩を落としました。
夫もその様子を見て、「そこまで追い詰められていたなんて……僕がそばについていながら申し訳ないです」と反省した様子だったそうです。
