夫亡き後の厳しい現実
記帳された履歴をたどると、現役時代から貯蓄をする余裕がなかったことがわかりました。夫の年収はピーク時でも700万円ほど。それでも、久美子さんに無理に働くよう求めることはなく、息子を私立大学に進学させ、マンションも購入していました。
退職金1,500万円は住宅ローンや生活費などの補填に消え、残ったのは200万円という、頼りない貯金だったのです。
「あの人、70歳を過ぎても働いていて『一生現役』なんて言ってたけれど、お金のためもあったのでしょうね。私に隠して……言ったって仕方ない、そう思われていたのでしょうね」
涙を滲ませる久美子さん。さらに、「夫の分の年金はどうなるのか」と年金事務所を訪ねたところ、夫の遺族厚生年金は月6万円ほど。久美子さん自身の年金と合わせても月11万円台の収入になることがわかりました。
家の管理費と修繕積立金で月3万円、光熱費1万円、食費2~3万円、医療費や日用品――。それらの支出を足せば、もうほとんど残りません。
年1回の固定資産税のほか家電の買い替えや冠婚葬祭の費用など、突発的な支出も想定されます。200万円の貯金はそう長くはもたない。久美子さんは言葉を失いました。
息子に迷惑をかけないために…下した決断
息子に頼るしかないのか? でも、あの子にも家庭がある。それだけは避けたい――。そう思い、久美子さんは区役所の福祉課を訪ねました。
職員からは、住宅確保給付金や生活福祉資金貸付制度、高齢者向け就労支援センターなど、さまざまな支援策を紹介され、「まだできることはある」と少しだけ希望が持てたといいます。
結局、久美子さんは息子と相談のうえ、築40年のマンションを売却し、公営住宅に申し込むことを決意しました。
「情けないですが、この年になって働く自信も気力もなくて。だったら家を手放して現金に替えた方がいいと思ったんです。古いけれど立地が悪くないので1,000万円くらいになるようで、管理費や固定資産税も払わずに済みます。自分のお葬式代も取っておきたいし、息子家族には迷惑がかからないようにしたい」
そう決断したとはいえ、夫との思い出が残る家を離れる寂しさに、涙を滲ませる久美子さん。「夫ときちんとお金の話をしておくんだった。養ってもらうだけではなく、若い時から私が働いていたら……」と後悔を浮かべます。
かつては“夫が稼ぎ、妻が家庭を守る”が理想とされた時代がありました。しかし今、その分業が老後の貧困を生む現実があります。収入・貯蓄・年金見込みを知らないままにすることは、無関心ではなくリスクそのもの。 甘えと依存の代償は、想像以上に重いのです。
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