「孫はかわいい。でも…」小さな違和感
「帰宅後の静けさに、ほっとしてしまうんです」
そう話すのは、関東地方で夫と暮らす道子さん(仮名・68歳)です。
夫婦の年金収入は月約22万円。退職金の残りや預貯金を合わせた金融資産は約2,500万円あります。住宅ローンは完済しており、家計がすぐに立ち行かなくなる状況ではありません。
長男夫婦は車で40分ほどの場所に住み、小学生の孫が2人います。月に1、2回は自宅に遊びに来て、夏休みや冬休みには預かることもあります。
「来ればもちろん、かわいいんです。顔を見るとうれしいし、成長も感じます。でも、夕方になって帰って、部屋が静かになると……正直、少しほっとするんです」
その感覚を、道子さんは長いあいだ誰にも言えなかったといいます。
地域の体操教室や友人とのお茶の席では、同世代の女性たちが孫の話をすることが増えました。
「毎週預かってるの」
「孫のためなら何でもしてあげたい」
「家に帰ると静かで寂しいわ」
そんな会話を聞くたびに、道子さんはうなずきながらも、どこか居心地の悪さを覚えていたそうです。
「私は、そこまでではないんです。孫は大切だけど、自分の時間も同じくらい大事です」
実際、孫が来る日は食事の支度も増え、気も遣います。食べこぼしを片づけ、おもちゃを広げた部屋を整え、帰宅後にはどっと疲れが出ることも少なくありません。
「“いいおばあちゃん”は、そういう疲れすら幸せだと思うものなのかな、と勝手に思い込んでいました」
道子さんがもう一つ気にしていたのは、お金のことでした。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均可処分所得は22万1,544円、平均消費支出は26万3,979円。年金やその他収入があっても、平均的には支出が上回り、取り崩しを前提とした暮らしになりやすいことがうかがえます。
道子さん夫婦の年金は月22万円ほどです。
「うちは貯蓄があるから大丈夫、と周囲には言えます。でも、旅行に行って、家の修繕もあって、孫に何か買ってあげて……と重なると、ずっと同じペースではいられないとも思うんです」
長男夫婦から露骨に援助を求められたことはありません。ただ、誕生日、入学祝い、帰省時の外食代、習い事の発表会の衣装代の相談――小さな出費が積み重なると、気持ちのうえでは“断りにくさ”が残るといいます。
