74歳専業主婦、夫の死後に気づいた「厳しい現実」
「うちの人は真面目で、家族のためにずっと働いてくれた人でした」
そう語るのは、夫を亡くした松原久美子さん(74歳・仮名)。短大を卒業後、地元企業に勤めていましたが、22歳で結婚。出産を機に退職して以来、専業主婦として家庭を守ってきました。
夫は小さな会社に勤め、定年まで勤続。退職後もアルバイトをしながら家計を支えてくれていたといいます。久美子さんは家計をすべて夫に任せ、毎月渡される生活費の範囲でやりくりしてきました。
しかし、夫が突然心筋梗塞で亡くなったことで、平穏な日常は一変しました。
現実を受け止めきれないまま葬儀を終えた久美子さん。生活費を下ろそうと、亡き夫の財布からキャッシュカードを取り出して銀行へ向かいますが、暗証番号がわからず、試しているうちにロックがかかってしまいました。
窓口では「ご本人以外はお手続きできません」と告げられ、愕然としました。当面頼れるのは、手元の現金数万円とクレジットカードのみ。結局、別で暮らしている息子にお金を借りながら、相続手続きを進めざるを得ませんでした。
さらに、タンスや書棚を探してようやく見つけた通帳の残高は、200万円弱。それを見た息子が「うそ、これしかないの?」と小さく叫び、久美子さんの不安を煽りました。
「夫を失ったうえに、貯金も少なくて……たった独りでどう生きていけばいいのかわからず、頭が真っ白になりました」
