欧州は、「相続税がない国」が多い
欧州には、相続税を課していない国が複数あります。エストニア、オーストリア、キプロス、スウェーデン、スロバキア、チェコ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、リヒテンシュタインなど、多くの国に相続税がありません。
このように税制が多様であることは、資産の保全や承継を重視する富裕層にとって大きな魅力となっています。
多言語環境も、国境を越えたビジネスを後押し
また、欧州では、1ヵ国のなかで複数の言語が公用語または準公用語として使用されているケースが多く見られます。
たとえば、イタリアではイタリア語のほかに、ドイツ語やフランス語が少数言語として使われています。オーストリアの公用語はドイツ語であり、スイスではドイツ語、フランス語、イタリア語などが共存しています。
フィンランドでは人口の約5%がスウェーデン語を話し、ベルギーでは地域によってオランダ語、フランス語、ドイツ語が使い分けられています。ルクセンブルクではルクセンブルク語のほか、フランス語とドイツ語が併用されています。
このように、フランス語圏(フランス、ベルギー、スイス、モナコ、ルクセンブルク)とドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイス、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、ベルギー、イタリア北部、フランス東部)が複雑に入り組んでおり、言語的にも経済活動がしやすい環境が整っています。
欧州の富裕層が有利な「3つの理由」
欧州の富裕層が他地域に比べて有利とされる理由は、次の3つにまとめることができます。
1.地理的な隣接性と移動の自由
多くの国が陸続きであり、シェンゲン協定によって国境を越えた移動が容易。
2.文化・言語の共有性
国をまたいでも文化や言語を共有できるため、生活やビジネスの両面で適応しやすい。
3.税制の多様性と選択の自由
国によって税制が大きく異なるため、富裕層は資産の種類やライフステージに応じて、より有利な税制を選ぶことができる。
このように、欧州は「生活の質」と「資産管理の自由度」を両立できる地域として、今後も世界の富裕層から高い関心を集め続けるでしょう。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
