(※写真はイメージです/PIXTA)

親の死後、相続の手続きに追われるなかで“思わぬ書類”が出てくることは少なくありません。とくに近年は、高齢者が生前に自ら不動産や金融資産を管理していたケースが多く、家族がその内容を正確に把握できていないことが増えています。登記簿や株券など、法的な意味をもつ書類が見つかると、相続人が知らない間に“他人の資産”や“名義のない財産”を抱え込むこともあるのです。

“知らなかった”では済まない相続の現実

金庫や机の引き出しから、古い登記簿謄本・株券・権利証などが出てくることは珍しくありません。問題は、名義や実態が一致していないケースです。

 

不動産の名義が他人であれば、形式上はその人の所有物。けれど実際に亡くなった方が管理・使用していた場合、贈与や譲渡の証拠を求められることがあります。

 

また、古い登記書類には地番の表記変更や合筆前の記録も多く、現代の登記情報と一致しないことも。安易に“不要だから破棄”すると、のちに財産権を証明できなくなるおそれがあります。まずは法務局で現状の登記を確認し、専門家に相談することが大切です。

 

理恵さんは、すべての書類をファイルにまとめ直し、専門家の立ち会いのもとで整理しました。

 

「結局、登記簿の土地は父の名義ではないことが分かり、相続財産には含まれませんでした。でも、父が“誰かのために名義を貸していた”と知って、複雑な気持ちになりました」

 

金庫の中に残されたのは、古い土地の登記書類と数枚の株券。紙切れのように見えるそれらが、家族にとっての“知られざる過去”を映し出す鏡になることもあります。

 

近年は法務省の「相続登記の義務化」により、2024年4月から不動産を相続した場合、3年以内に登記申請を行わなければならないことが定められています。手続きを怠ると、10万円以下の過料が科される場合もあります。

 

親世代が残した“古い書類”ほど、放置せずに一度確認することが重要です。登記や株券などは、「見つけた瞬間に専門家へ」。それが、思わぬリスクを防ぐ第一歩になります。

 

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