「5年も触っていなかった父の証券口座が…」
「ログインした瞬間、思わず『嘘だろ…?』と声が出ました」
そう語るのは、東京都在住の52歳会社員・佐野浩一さん(仮名)。5年前に亡くなった父・和夫さんが残した証券口座に、ふとしたきっかけでログインした瞬間の出来事だったといいます。
和夫さんは、定年退職後も「株だけは趣味」と話していたものの、晩年は軽い認知症の兆候も見られ、資産管理はほとんどしていない様子でした。亡くなった当時、家族で遺品整理をする中で証券会社のIDとパスワードが書かれたメモを見つけ、相続税申告の際に税理士に提出はしたものの――
「家族の誰も証券口座に詳しくなくて、中身はよくわからないままでした。母も『とりあえず申告しておけばいい』と言っていて、その後も口座はずっと放置されていたんです」
ところが、母の死後に家を整理していたところ、再びそのメモが出てきた浩一さん。なんとなくログインしてみたところ――
「含み益込みで2,300万円。しかも日本株だけじゃなく、米国株や投資信託まで分散されていて。完全に父の“ひとり資産運用”でしたね」
和夫さんは生前、贅沢を好むタイプではなく、年金の範囲内で質素に暮らしていたといいます。家計もほとんど現金主義で、証券口座のことも家族には一切話していませんでした。
「母も中身についてはまったく知らなかったみたいで、『そんなに持ってたの?』なんて驚いていました」
こうした“気づかれないまま放置された証券口座”は、実は珍しいものではありません。特にネット証券の場合、紙の通知が届かないため、ログイン情報を遺族が知らないままだと、存在すら気づかれないこともあります。
