(※写真はイメージです/PIXTA)

親の死後、相続の手続きに追われるなかで“思わぬ書類”が出てくることは少なくありません。とくに近年は、高齢者が生前に自ら不動産や金融資産を管理していたケースが多く、家族がその内容を正確に把握できていないことが増えています。登記簿や株券など、法的な意味をもつ書類が見つかると、相続人が知らない間に“他人の資産”や“名義のない財産”を抱え込むこともあるのです。

金庫に眠っていた「見覚えのない書類」

「まさか、父の名前がどこにも書かれていないなんて……」

 

そう語るのは、横浜市在住の会社員・田村理恵さん(仮名・48歳)です。

 

2年前、父親が亡くなったあと、母と一緒に遺品整理を進めていた際、寝室のタンス奥から古びた金庫を発見。中には印鑑、古い通帳、そして一枚の不動産登記簿謄本が入っていました。

 

「父が“田舎に土地を持っている”とは聞いていたんですが、登記簿に書かれていたのは“別の人物”の名前。住所も知らない場所で、意味がわからなかったんです」

 

税理士に相談したところ、父親は昔の知人のために土地の「名義を借りていた」可能性があると分かりました。つまり、実際の所有者は別人なのに、登記上は父親の名義で処理されていた――あるいはその逆、父が資金を出して建てた建物を他人名義にしていた可能性もあるのです。

 

「父の遺産として相続手続きに含めるかどうかで悩みました。名義人が他人なら父の財産ではないけれど、税務署からは“相続財産の可能性あり”と確認が入り、結局、弁護士を交えて調査することになりました」

 

こうした「名義貸し」や「名義登記」は、バブル期の不動産取引や家族間贈与でしばしば行われており、相続時に初めて発覚する典型的なトラブルといえます。

 

理恵さんのケースでは、さらに“もう一つの発見”がありました。金庫の底から出てきた封筒の中には、昭和時代の株券が数十枚。

 

「銘柄を調べたら、いくつかはすでに上場廃止。けれど、1社はまだ存続していて、“株式移管の手続き”をすれば配当を受け取れる可能性があると分かりました。ただ、父の名義と住所が古すぎて、証券会社からの照会や手続きに半年以上かかりました」

 

2009年の「株券電子化」以降、紙の株券は無効化されています。しかし、旧株券を手放さず保管していた場合、証券会社で口座を特定し、手続きを経て電子化すれば権利を回復できるケースもあります。

 

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