“引き返せない支出”が、家庭を追い込んでいく
「じゃあ塾をやめればいいじゃない?と思う人もいるでしょうが、子どもが頑張っている様子を見ているので、“お金がないからやめよう”とは今更言えません。一度“受験レース”に乗ったら、途中下車はなかなかしづらいんです」
住宅ローンや食費を削っても、月に数万円の赤字が出る。夏のボーナスはすべて塾費に消えた。自分たちの老後資金には、ここ1年ほとんど手をつけられていない。そんな日々が続いているといいます。
世帯年収が1,000万円あるというと、周囲からは「それだけあれば余裕でしょ」と見られがちです。実際、税制面でも「高所得者層」として扱われ、さまざまな支援の対象から外れがちです。
しかし現実は、
●都内在住で持ち家 or 賃貸の住居費は月15万前後
●教育費だけで月10万超
●自分たちの趣味や旅行、外食はほぼゼロ
●それでも赤字が出て、貯金を取り崩している
といった状況。
「子どもがいるから、楽しいこともあるし、頑張れるんです。でも正直、“これがあと5年続くのか…”と思うと、胃が痛くなります」
教育にお金をかけるかどうかは、家庭の自由です。中学受験は義務ではありませんし、「公立で十分」と考える人も多いでしょう。
しかし一方で、今の日本では「公立だけでは不安」と感じる家庭が増えているのも事実です。安全面、学力格差、進学実績、通学環境……。子どもの可能性を広げたいと思う親の気持ちは、単なる見栄では語れない部分もあるのです。
「支援が必要なのは低所得世帯だけじゃない。制度から少し外れた“グレーゾーン”の家庭が、いちばん静かに壊れていくのかもしれません」
井上さんはそう言って、今月もまた、家計簿に赤い数字をつけます。
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