突然の死で明らかになった、老後資金の現実
「葬儀もまともに出せませんでした」
そう話すのは、関東地方で暮らす佐藤恵子さん(仮名・68歳)です。
夫の繁さん(仮名)は会社員として定年まで働き、退職金は約2,000万円。さらに長年の貯蓄を合わせ、退職時点で夫婦の金融資産は約3,000万円ありました。住宅ローンはすでに完済しており、年金収入は夫婦で月約27万円。
「贅沢をしなければ大丈夫だろうと思っていました」
家計の管理は主に繁さんが行っていました。恵子さんは生活費を渡される形で暮らしており、預金の詳しい状況はあまり把握していなかったといいます。
夫婦は旅行好きで、退職後は国内旅行を楽しみ、時には海外にも出かけました。
「やっと自由な時間ができたんだから、少し楽しもう」
繁さんはそう言っていたそうです。
しかし、その穏やかな生活は突然終わりを迎えます。
ある朝、体調不良を訴えた繁さんは病院に搬送され、そのまま帰らぬ人となりました。急性心疾患でした。
「まさかこんなに急に…」
恵子さんは大きなショックを受けました。
葬儀の準備や各種手続きに追われるなか、恵子さんは初めて夫名義の通帳を確認することになりました。そこで目にした数字に、思わず言葉を失ったといいます。
退職時には3,000万円あったはずの貯蓄。しかし通帳に残っていた預金は、思っていたよりもはるかに少ない額でした。旅行費用や生活費、車の買い替え、住宅の修繕など、長い年月の中で少しずつ取り崩されていたのです。
さらに恵子さんは、もう一つの現実に直面しました。
繁さん名義の口座は、死亡が確認されると金融機関によって一時的に凍結されます。相続手続きが終わるまで、自由に引き出すことはできません。
「すぐに使えるお金が、ほとんどなかったんです」
葬儀費用の準備にも苦労したといいます。
