「あいつは年収1,000万円ある。月3万円くらい…」
千葉県在住の76歳男性・川上忠夫さん(仮名)。定年後の生活は年金月11万円。妻と死別し、現在はひとり暮らし。生活費はなんとかやりくりできていたものの、「年々物価が上がっていくなか、余裕がなくなっていった」と振り返ります。
川上さんには子どもが一人。関東近郊で働く48歳の長男・翔太さん(仮名)です。大学を出て一部上場企業に勤務し、年収は1,000万円を超えると聞いていました。
「親の面倒を見てくれる子だと信じていた。だからこそ、生活費の足しに毎月3万円の仕送りを頼んだときも、断られるとは思っていなかった」
しかし、翔太さんの反応は冷たく、電話口での会話はわずか3分ほどで終わりました。後日、LINEにはこうメッセージが届きます。
「父さん、俺は“金が惜しい”わけじゃない。だけど、それを当然だと思っているなら、今後は連絡を控えてほしい」
川上さんは呆然としたといいます。「そんな言い方、あんまりだろ」と憤りつつも、以降、親子の連絡は途絶えたままです。
「老後の生活費が厳しいのは事実。でも、親子なんだから助け合うのが当たり前じゃないか」
川上さんはそう語りますが、周囲からは「考え方が一方的すぎる」と指摘されることも少なくないそうです。
実際、翔太さんは結婚しており、妻と子ども2人を育てながら住宅ローンも返済中。「年収1,000万円」というと裕福なイメージがありますが、都心部の暮らしでは決して“余裕がある”とは言い切れないのも現実です。
国の制度上、子どもには親を扶養する「扶養義務」がありますが、これはあくまで“民法上の義務”であり、現実的には「気持ちの問題」で支援が行われることが多いです。
翔太さんのように「支援をする・しない」を明確に線引きする人が増えている背景には、自分自身の将来不安や家計状況だけでなく、「親からの期待が重い」と感じてしまう心理的要因もあります。
