「自然に囲まれて、のびのび子育て」夢だった郊外マイホーム
「子どもが生まれたら、やっぱり戸建てがいいよね。庭でプールとか、バーベキューもできるし」
都内で共働き生活を送っていた吉田拓也さん(仮名・38歳)と妻の美沙さん(仮名・36歳)は、長男の誕生を機に「郊外でのマイホーム購入」を決意しました。
予算は土地と建物を合わせて6,000万円弱。通勤に1時間以上かかるエリアながら、100㎡を超える敷地に念願の庭つき一戸建て。2人の合計年収は約1,180万円あり、住宅ローンの審査にも余裕で通りました。
「ちょっと郊外だけど、子どもが小さいうちは在宅勤務も多いし、何より“自分の家”があるって嬉しくて。当時は『これが幸せのカタチだ』と思っていました」(拓也さん)
ところが——夢だったはずのマイホーム生活は、想像以上に「手間とコスト」がかかるものでした。
まず直面したのは、固定資産税・都市計画税あわせて年17万円の請求。マンション暮らしでは気にしたこともなかった維持費用が、毎年のように出費を圧迫します。
「庭の芝生もすぐに雑草だらけになるし、剪定も害虫対策も全部自分たちでやらなきゃいけない。業者に頼むと数万円しますし……」(美沙さん)
さらに、子どもの送迎にも思わぬ苦労がありました。
「駅から遠いから、保育園の送り迎えは完全に車。夫婦ともにリモートワークじゃない日もあるから、調整が大変で。小学校に上がっても、習い事は全部親の送迎です」(美沙さん)
時間的な負担に加え、電車通勤の定期代や駐車場代、家のメンテナンス費、広い家ゆえの冷暖房代などが積み重なり、生活コストは目に見えて上昇しました。
吉田さん一家の住宅ローンは、変動金利で月々の返済額は約14万円。世帯収入から見れば余裕のはずでしたが、光熱費や車関連の費用を含めると「毎月の自由に使えるお金が激減した」といいます。
また、当初は「住宅ローン控除があるから安心」と思っていたものの、2022年から控除率が1%→0.7%へ縮小。さらには、控除対象額が年末ローン残高の上限にも制限されていたため、思っていたほど節税効果を得られなかったといいます。
「ローン控除も年数が経てば終わるし、控除額も思っていたより少ない。結局、控除が終わる頃には家の修繕費がかかる時期に入るんですよね」(拓也さん)
