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慎ましい生活と孫への思い
海野陽子さん(70歳・仮名)は、夫・博之さん(73歳・仮名)と静岡県内で暮らしています。夫婦の年金は合計で月23万円。貯蓄はありますが、日々の生活に余裕があるわけではありません。
そんな陽子さんが最近、心のどこかで負担に感じているのは、都内に住む長男一家から届く「イベント写真」です。長男(40歳)は都内の私立大学に通っていた頃に妻(37歳)と出会い結婚。小学校1年生と保育園に通う4歳の孫もおり、ハロウィンやクリスマスなど、季節のイベントごとに、楽しそうな写真がLINEで送られてきます。
「仮装した孫の写真は可愛いんですけれど、正直『大変だな』と思います。『最近は100円ショップでいろいろそろうんですよ』とお嫁さんは言いますが、本当に近くに住んでいなくて良かったと思いました。衣装代だってお嫁さんの実家が出しているんでしょう」と陽子さんはこぼします。
そして、「孫は可愛いし、悪気があるわけではないんです。でも、毎回写真が送られてくると、まるで『じいじ・ばあば失格』って言われている気がしてしまうんです。夫は気にし過ぎと言うんですけれどね……」と陽子さんは言います。
帰省の負担と体力の限界
実際、息子一家が帰省すると、その準備やもてなしも負担です。外食に連れて行ったり、お年玉やお小遣いを用意したり。静岡という距離は都内からもそれほど遠くはないため、比較的頻繁に顔を見せることも負担に感じると言います。特に陽子さんが数年前に婦人科系のがんを経験してからは、疲れもいっそう重くなったそうです。
「お嫁さんは悪い人ではないのですが、帰省したときに『お義母さんの負担になるので、みんなで外食しません? 私、あの回転寿司に行ってみたかったんですよ!』とあっけらかんと言い放ちます。たまのことだからいいかと思い、出かけるのですが、当然お会計はこちら持ち。何だかモヤモヤします」と陽子さん。
一方、ハロウィンやクリスマスなどのイベントは、息子の妻の実家で行われることが多いそうです。都内に住む妻の両親は60代半ばで元気いっぱい。高尾山に行ったり、アミューズメント施設に行ったり、都内でお出かけを楽しんでいる姿を見ると、陽子さんはこう思うそうです。
「アクティブシニアっていうんですか? 都会のシニアって元気なんだなと思います。あちらはつい最近まで働いていたし、お金にも余裕がある感じが写真から伝わってきます。『まあよくやるわ』という感じなのですが、だんだんプレッシャーに感じてきました」
経済的なプレッシャーも
総務省統計局『家計調査 家計収支編2024年平均』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合、税金や保険料などを引いた可処分所得は月22万円ほど。対し、支出は25万円ほど。イベントごとのおもてなしや孫へのプレゼントが積み重なると、老後資金の切り崩しにもつながります。
陽子さんは、孫のことも大切に思いながらも、まずは自分たち夫婦の生活と体調を守ることが最優先だと考えています。「孫のために無理をして疲れてしまうと、こちらの生活もままならなくなってしまう」と話します。しかし、モヤモヤは晴れないようで……。
