今回は、 高圧的なメイン銀行に「根抵当解除」を受け入れさせた交渉術について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

返済相当額の入金を告げたところ、支店長の表情が一変

「銀行交渉に大切なのは、信頼関係です!」
「ウチは信用があるから、これだけの額を貸してもらえます!」

 

などなど・・・。誤った認識で、不利な条件をのまされている会社を、たくさん見てきました。

 

現代の銀行交渉に、義理・人情は通じません。銀行にとっては、生き残りをかけた、仁義なき戦い、なのです。企業側も、その心づもりで臨まねばならないのです。

 

前回の続きです。

 

メイン銀行の強気の姿勢にガマンがならず、ライバル銀行から融資を受け、メイン銀行の残債を一気に返済してしまう、という日になりました。

 

そして、有無を言わせず有償解除をお願いする、という実行に移ったのです。

 

メイン銀行に商談に伺いました。支店長はまだ、商談内容を知りません。異常気象により、あちこちで災害が続くなか、

 

「いやぁ、世の中いったい、いつ、何が起こるかわかりませんねぇ」

 

という、雑談が交わされていました。そして、本題に入りました。

 

「実は、以前にもお願いしたのですが、改めて、根抵当の解除のお願いにあがりました」

「いや、それは、返済をいただかないと・・・」

「あ、なので、つい先ほど、その金額を振り込みました」

「えっ・・・・・・」

 

支店長の表情は、一変しました。慌てて残高をチェックし、返済相当額の入金が確認されていました。

 

「他行からお借りし、お返しになられた、ということですか・・・」

「そういうことです」

「今さら言ってもなんですが、もう振り込まれた、ということですね・・・」

「そういうことです」

「いや、それは、先に一言、ご相談いただければ・・・」

「いやいや、こちらは、いの一番に、相談をしましたよ」

「そうです・・・けれども・・・」

「こちらはオフバランスしたいだけなのに、協力的な姿勢をいただけませんでしたよねぇ」

「おっしゃられることは、わかります、しかし・・・」

「このままでは、我々が望むオフバランスは進まない、と判断したまでです」

「・・・申し訳ございません。メイン銀行として、タカをくくっていた、ということを、深く反省させていただきます・・・」

「これで、根抵当は解除いただけますよね」

「いや、も、もちろんでございます・・・」

経営を磐石にするには「銀行との有利な取引」が必須

これにて、メイン銀行からの融資はゼロになり、協力いただいた地銀に、借入先が変わった、というわけです。そして、根抵当解除の手続きが、始まったのです。

 

当然のことながら、そのメイン銀行本部では大きな問題となり、その後の動きもあるわけですが・・・・、それはまた、別の機会に・・・・。
(これもなかなか、スゴイ話なのです。)

 

銀行は、当然ですが、交渉事を有利に導こうとします。メイン銀行であれば、なおさらです。強気に事を進めようとする銀行マンが、多いのです。しかし、それに流される必要はないのです。

 

どこかで断ち切り、交渉事として、互角に向き合ってほしいのです。それによって、残るキャッシュが変わってきます。銀行との取引条件に力を注ぐことは、財務基盤を強くし、経営を盤石なものにする、ということに、繋がるのですから。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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