メイン銀行の要求は「自行の融資シェア拡大」
「銀行交渉に大切なのは、信頼関係です!」
「ウチは信用があるから、これだけの額を貸してもらえます!」
などなど・・・。誤った認識で、不利な条件をのまされている会社を、たくさん見てきました。
現代の銀行交渉に、義理・人情は通じません。銀行にとっては、生き残りをかけた、仁義なき戦い、なのです。企業側も、その心づもりで臨まねばならないのです。
ある企業で、土地売却によるオフバランスを進めていました。しかしその土地には、メイン銀行の根抵当がついていました。そこで、有償解除を申し入れ、借り換えのお願いをしたのです。
つまり、新たに借りるお金で、前の借入残高を全部お返しするから、根抵当を外して下さい、というお願いに上がったのです。
すると、その銀行支店長はこう言ったのです。
「それでしたら、○○銀行さんからお借りになっている分も、こちらで融通しますので、それでいかがでしょうか?」
「えっ、どういうことですか?」
「いや、そのぉ、もう少し、シェアを広げさせていただければ・・・」
その企業は、2つの銀行から融資を受けていました。そのことは、そのメイン銀行も承知です。つまり、融資のシェアを100%にさせてくれたら、有償解除を受入れる、というような了見です。
これはかなり、ずうずうしい提案です。
「根抵当を外してほしいなら、この要求をのむだろう」
あるいは、
「こう言えば、そんな要求は撤回するだろう」
という、強気の発言ですね。メイン銀行であり、根抵当を抑えている、というたてのもと、色気を出してきたわけです。
「そういうことなら、少し考えさせて下さい」
その企業の担当者は、そう応えました。
「他行から借入はできない」と踏んだメイン銀行だが…
そうこうするうちに、そのメイン銀行は、
「土地を売ってオフバランスなんて、税務上、大丈夫ですか?」
「ウチなら、もっと良い提案をさせていただきますよ?」
「そう言えば、御社とは、20数年来のおつきあいですね」
などなどと、言ってくるようになりました。
結局、その銀行への信用は、ますます薄くなり、他の銀行から借りて、現メイン銀行の残高を返すことにしたのです。とはいうものの、その地域には、銀行の数そのものが限られています。新たな借入ができるのか、という不安もありました。そんなことも承知で、メイン銀行は強気だったのです。
しかし今や、どの銀行だって、新たな融資を獲得したいのです。その地域の第2地銀に話を持ちかけたところ、
「ぜひ協力させてください!」
ということに、なってきたのです。
その時、メイン銀行は、生き残りをかけた戦いが始まっていることを、まだ、しるよしもなかったのです。
(次回につづく・・・)