通帳に残された“意外な金額”
もうひとつ、麻衣さんを驚かせたのは、父の通帳残高。
「ほとんどないと聞かされていたのに、100万円以上あったんです」
どうやら父は、年金と仕送りで生活しつつ、使わなかった分を少しずつ定期に預けていたようでした。
「お金がないフリをして、もしかしたら“老後に備えて”と私を気遣っていたのかもしれません。何だかずるいような、でも…やっぱりありがたいと思ってしまいます」
麻衣さんのように、親に仕送りを続ける人は少なくありません。制度上、仕送りの金額や頻度によっては「贈与」とみなされることがありますが、一般的に生活費や教育費など“日常の範囲内”であれば贈与税は非課税とされています。
ただし、以下のようなケースは注意が必要です。
●高額(年間110万円を超える)であった
●生活費ではなく、資産形成(親名義の貯金や不動産購入など)に充てられた
●契約書などで「無利子の貸付」としていたのに返済がない場合
今回の麻衣さんのように、仕送りを記録していた場合は、贈与の事実が明確になるため、税制面での影響が出ることもあり得ます。相続発生後に「仕送りか、贈与か、貸し付けか」と揉めるケースも多いため、可能であれば帳簿やメモの保管、家族間での意志確認をしておくのが望ましいでしょう。
最後に、麻衣さんは「父が残してくれたのはお金じゃなく、心だった」と語ります。
「正直、もっと優しい言葉が欲しかった。でも、あの封筒を見て、“ああ、この人なりに一生懸命だったんだ”と思えて、報われた気がしました」
形に残るもの――それが、言葉でなくても、記録であっても、手書きのメモでも、人の気持ちは伝わるのかもしれません。
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