「どうせローンでしょ?」の一言がきっかけだった
「同僚にそう言われたのが、正直、悔しかったんです」
そう語るのは、会社員の岡田大輔さん(仮名・38歳)。都内で妻の美咲さん(仮名・37歳)と2人暮らしをしています。
世帯年収はおよそ700万円。子どもはおらず、共働きで貯金も順調に増えていました。そんなある日、大輔さんは営業先で新型SUVに試乗し、すっかり心を奪われたといいます。
「昔から車が好きで、“次はSUV”と決めていました。職場でも新車を買う人が多く、正直うらやましかったんです。」
とはいえ、現金で一括購入するほどの余裕はない。ディーラーから提案されたのが「残価設定ローン」でした。
頭金50万円、月々の支払いは3万円台。3年後には残価(最終支払い額)を支払うか、車を返却するかを選べる仕組みです。
「月3万円なら家計にも響かない」と感じ、契約を即決。納車の日、SNSに写真を投稿すると、職場の同僚からのコメントが目に入りました。
「どうせローンでしょ?」
その一言に火がつきました。
「なんで素直に“いいね”と言えないのか。自分で稼いだお金で買ったのに。」
当初は順調でした。共働きで家計を分担し、大輔さんのローンはボーナス払いを含めても年間60万円ほど。「趣味の範囲」と割り切っていました。
しかし、ガソリン代・駐車場代・メンテナンス費用を合わせると、実際の年間維持費は約90万円。さらに3年目を迎える頃には、車検代やタイヤ交換費も重なり、想定外の出費が続きました。
「月3万円のローンだけを見ていたけど、実際には1年で100万円近くかかっていたんです。」
妻の美咲さんも当初は「夫の夢だから」と応援していましたが、家計簿の赤字を見て表情を曇らせます。
「貯金を崩して車に回すなんて、本末転倒じゃない?」
