(※写真はイメージです/PIXTA)

親が亡くなった直後、葬儀費用や公共料金の支払いを“とりあえず親の口座から”——そう考える人は少なくありません。しかし、預貯金は死亡と同時に「相続財産」となり、多くの場合、金融機関は入出金を停止します。本記事では、相続手続きを後回しにした息子が、葬儀の翌日に味わった現実と、正しい手順・制度のポイントをお伝えします。

葬儀の翌日、「残高があるのに引き出せない」

「え、利用できませんって…? 残高はあるはずなのに」

 

会社員の村瀬直人さん(仮名・46歳)は、母・道代さん(78歳)の通夜・葬儀を終えた翌朝、祭壇費用と病院への未払い分を支払うため、最寄りのATMへ向かいました。キャッシュカードを差し込むと、画面に表示されたのは「お取引ができません」。慌てて窓口へ駆け込むと、行員は静かに告げました。

 

「お母さまがご逝去との届出を確認しましたので、口座は相続手続きが完了するまでお取引停止となっております。」

 

前日に火葬許可の関係で役所へ死亡届を出したばかり。金融機関には知らせていないつもりでしたが、戸籍・年金・公共料金の停止連絡、新聞の訃報、葬儀社・互助会からの照会など、複数のルートで金融機関が把握することは珍しくありません。

 

預貯金は名義人の死亡で相続人の共有財産となります。金融機関は、相続人間の紛争や不正な引き出しを防ぐため、死亡の事実を認知した時点で払戻し・振込・口座振替を原則停止します。

 

「母の生活費の支払いだから」「葬儀代だから」といった“善意の出金”でも、法的権限が未整備のままの出金は不可が原則です(後日、相続人間で争いの火種になり得るため)。

 

●キャッシュカードでの出金を試みる

 

死亡後の出金は相続人間で無権限取引として問題化しやすく、返還請求の対象になり得ます。

 

●銀行に死亡を伝えず引き続き使う

 

後から判明した場合、凍結・取引調査・返還の手間が増し、相続人間の信頼を損ねます。

相続を円滑に進めるための手続きステップ

●遺言書の有無を確認(一般的には公正証書遺言があれば最短ルート)

 

●相続人の確定:被相続人の出生から死亡までの戸籍一式を収集

 

●法定相続情報一覧図の作成・交付(法務局、無料)

 → 各金融機関・法務手続きで戸籍一式の束の代替として使える“身分関係の証明”

 

●金融機関へ相続届:①死亡の届出 ②残高・取引明細の取り寄せ ③必要書類の案内入手

 

●遺産分割協議書の作成(相続人全員の実印・印鑑証明書)

 → 預貯金の払戻し、定期預金の解約、投資信託の名義変更等の根拠書類

 

●仮払い制度の活用:金融機関ごと上限150万円まで、葬儀費用などのために相続人単独で払戻し可

 (相続人であることの確認書類、被相続人の戸籍、死亡記載の住民票除票、葬儀社見積・請求書などが求められます)

 

ポイント:葬儀後の当座の支払いは「仮払い制度」を前提に計画。カードでの抜き取りに頼らない。

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

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