(※写真はイメージです/PIXTA)

親が亡くなった直後、葬儀費用や公共料金の支払いを“とりあえず親の口座から”——そう考える人は少なくありません。しかし、預貯金は死亡と同時に「相続財産」となり、多くの場合、金融機関は入出金を停止します。本記事では、相続手続きを後回しにした息子が、葬儀の翌日に味わった現実と、正しい手順・制度のポイントをお伝えします。

「日常を止めない」ための名義変更のポイント

●公共料金・電話・NHK・サブスク:死亡後は自動引き落としが止まるため、早期に名義・支払口座を変更。

 

●クレジットカード・電子マネー:カード会社へ死亡連絡、未払い確認。家族カードは同時に停止。

 

●年金・保険:年金は未支給年金の請求手続き、健康保険からは葬祭費/埋葬料の支給(保険種類で名称・額が異なります)。生命保険金は受取人固有の財産で相続財産とは別扱い、ただし相続税の非課税枠(500万円×法定相続人)を意識。

 

●貸金庫:原則開扉停止。相続人立会い・銀行同席・目録作成のうえ開扉の段取り。

“レアケース”で知っておきたいこと

●定期預金の中途解約:金融機関所定の相続手続き(遺言/協議書)後であれば可能。利息計算は約款どおり。

 

●借金がありそうなとき:相続放棄や限定承認は「相続開始を知ってから3ヵ月以内」。通帳明細・カード明細・信用情報開示で負債の有無を早期確認。迷えば家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申立て。

 

●準確定申告:被相続人に事業収入・不動産収入があれば、死亡日の翌日から4ヵ月以内に所得税の申告・納付。

 

●相続税申告:課税遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)超なら、10ヵ月以内に申告・納付。

 

直人さんは、感情のままに銀行へ食ってかかるのをやめ、まず法務局で法定相続情報一覧図を取得。ケアマネ経由で葬儀社の請求書を整え、銀行の仮払い制度で150万円の範囲内の払戻しを受け、葬儀費用と病院の未払いを清算しました。

 

そのうえで、兄と妹を交えて遺産分割協議書を作成。普通預金・定期・投信・公共料金の清算を一括で進め、凍結から約1ヵ月で主要な口座を解約できました。

 

「“亡くなったら口座は使えない”と知っていれば、翌日のATMで固まらずに済んだ。」

 

直人さんはそう振り返ります。

 

金融機関の口座凍結は、相続人の財産を守る安全装置です。焦ってカードを使うより、

 

●相続人確定(戸籍/法定相続情報)

●仮払い制度の活用

●遺産分割協議書で正式払戻し

 

という“正しい順番”が結局は最短ルートになります。

 

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