教科書どおりのウォーキングでひざを痛める人も・・・
●ウォーキング
中高齢者の間で最も行われている運動がウォーキングです。これまで運動を全くしてこなかった人でもでき、靴以外は特に道具も必要ないため、明日からでも始められます。肥満傾向のある人や高血圧、糖尿病の人は、主治医の先生から1日20分は歩くように指導されている人も多くいるのではないでしょうか。
ウォーキングの教科書によると、腕を直角に曲げて大きく振り、歩幅を広くとって、かかとから着地するように書かれています。しかしこのような歩き方で無理をすれば、ひざ痛の人はかえってひざが痛くなってしまい、炎症を起こし、水が溜まってしまいます。
アメリカの調査では、政府の奨励する1日1万歩の歩行ができている変形性膝関節症患者は15%前後であるとされています。ひざが痛くて通常の歩き方では長時間歩くことが難しい人は、次にご紹介する「母趾球歩き」を試してみてください。
足裏の親指側に体重をかけて、ひざの内側の荷重を分散
●母趾球歩き
整形外科医の田中瑞雄先生が提唱された「母趾球歩き」という歩き方があります。田中先生ご自身も変形性膝関節症を患ったご経験があり、様々な試行錯誤の末に生み出した歩き方だそうです。
母趾球歩きとは、足裏の親指側に体重をかけて歩く方法です。特に親指の付け根にある丸いふくらみ(母趾球)付近で強く地面を蹴って歩くことで、ひざの内側にかかる荷重が外側に分散され、軽度のひざ痛であればあるほど痛みが消失しやすくなるといいます。
これとは逆に、足の外側(小指側)だけを地面につける歩き方を「小趾球歩き」といい、筋肉を使わないので一見楽なのですが、大いにひざに負担をかける歩き方だそうです。加齢により体重が増えると小趾球歩きをする人が多くなり、変形性膝関節症の悪化の一因になります。
田中先生が母趾球歩きを勧めた人の改善率は100%で、特に初期の変形性膝関節症の克服に絶大な効果があるそうです。私も母趾球歩きを知ってから患者さんに勧めており、大きな手ごたえを感じています。
まずは、短い距離、時間から始めて徐々に距離を延ばしてみましょう。痛みを感じたら少し休憩して、マッケンジー・エクササイズを行ってみてください。
群馬県中之条町で65歳以上の全住民5000人を対象に10年間身体活動と健康について調べた研究があります。この中之条研究で明らかになったことは、一日のうち中強度程度の活動がしっかりできていた人は様々な病気の予防に効果的であったということです。
加速度センサーを内蔵した身体活動計を使った調査の結果、算出された具体的目標は「平均1日8000歩・中強度の運動20分」です(中強度の運動とは早歩き等、うっすら汗ばむ程度の運動)。身体活動計は簡単に携帯でき、今はインターネットや家電量販店でも入手可能です。
母趾球歩きで痛みなく歩けるようになったら、1日8000歩、早歩き20分を目安にがんばりましょう。