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妻の実家から届く贈り物に感じた「見えない差」
東京都内で暮らす武富賢一郎さん(44歳)は、10年前に妻・千織さん(40歳)と結婚しました。2人は大学のサークルの先輩と後輩。学生時代には特に親しくしていたわけではありませんでしたが、卒業後に開かれた同窓会で再会し、意気投合して交際に発展しました。
千織さんの実家は東京都内にあり、両親は共働きでした。中高は私立の女子校に通い、大学進学後も親のサポートを受けながらのびのびと学生生活を送っていたといいます。一方、賢一郎さんの実家は九州。父は数年前に亡くなり、現在は75歳の母が一人暮らしをしています。派手さはないけれど、温かい家庭で育ったことを賢一郎さんは誇りに思っていました。
6年前に長女が生まれてから、千織さんの実家は頻繁に贈り物を送ってくれるようになりました。おもちゃや洋服、さらには記念日のプレゼントまで。最初のうちはありがたく受け取っていましたが、次第に賢一郎さんは、両家の「経済的な差」を意識せずにはいられなくなりました。
「妻の実家では、何かあると気軽にお寿司をとったり、近所の馴染みの店で食事をしたりするんです。近所の『気の置けない店』と言っても『気が置けなくない』というか、僕から見たらいいお店。うちの母は、帰省するといつも地元の食材で手料理をふるまってくれますが、やっぱり素朴で。千織も喜んでくれるけれど、どうしても“違い”を感じてしまうんです」
娘が「東京のじいじとばあばに、これを買ってもらった」と嬉しそうに話すたび、母の表情が少し曇るようになったといいます。
「長男なのに、十分なことをしてあげられなくてごめんね」
ある年、母が上京した際に両家で食事をする機会がありました。母が九州へ帰った日の夜、母から電話があり、「賢一郎、長男なのに、十分なことをしてあげられなくてごめんね」と涙ながらに話したのです。
「母がそんなふうに泣いたのは初めてでした。自分は何不自由なく育ててもらったし、地方と東京で生活レベルが違うのは当たり前だと思っていた。だから“謝らないで”と伝えました」
その話を聞いた千織さんは、静かにこう言いました。
「うちの両親、共働きで私に十分にかまってあげられなかったという思いがあって、“お金で解決する”ことで愛情を示そうとするところがあるの。中高の同級生はお嬢様ばかりで、意外にそういう家の子たちは質素なのよ。だから私は、なんでもお金で済ませる親が嫌だったこともあるのよ」
千織さんにとっても、「お金に余裕がある=心の余裕」とは限らないと感じていたのです。
