「コート1着分で、3日暮らせる」
76歳の大森康子さん(仮名)は、東京都郊外の団地で一人暮らしをしています。夫を数年前に亡くし、現在は月13万円の年金(遺族年金含む)で生活しています。
10月に入り、冬物の衣替えをしようとクローゼットを開いて、康子さんはふと手を止めました。
「もう3年は着ていないウールのロングコート。クリーニングにも2,000円はかかるし、保管スペースももったいない。売れば数百円にはなるから、思い切って処分することにしました」
当時、冷蔵庫の食材が底を尽きかけており、「このコート1着分で、3日くらいは生活できる」と本気で思ったといいます。
大森さんの毎月の支出は以下の通りです:
家賃(都営住宅):約25,000円
光熱費(水道・ガス・電気):約10,000円(冬場は15,000円に上昇)
通信費(携帯・ネット):約5,000円
食費:月25,000〜30,000円
医療費(通院・薬代):月7,000円程度
雑費・日用品:5,000円
交際費・交通費・冠婚葬祭など:月5,000〜8,000円
これだけで月11万〜12万円が消える生活。残るのはわずかな余剰のみで、「季節の衣類メンテナンス代」は毎年頭を悩ませる支出項目だといいます。
「ニットやダウンコートを毎回クリーニングに出せないので、消臭スプレーで済ませることも増えました。1着数千円の手入れ代でも、月のやりくりに直結するので、出すのが怖いんです」
また、衣類の保管場所にもコストがかかります。
大森さんは団地の2DKに住んでいますが、エレベーターなしの4階で、天袋や押し入れの出し入れにも一苦労。収納が限られているため、オフシーズンの服をしまっておくには圧縮袋や収納ケースの購入が必要で、それも1個500円〜1,000円前後の出費になります。
「収納ケースを買うお金がもったいないって、若い人には笑われるかもしれないけど、月1万円単位で赤字が出るかどうかの生活では、500円も大きい。何もかも、“最小限”にしないと回らないんです」
