(※写真はイメージです/PIXTA)

東京都内で暮らす武富賢一郎さん(44歳)は、妻の千織さん(40歳)、6歳になる娘との3人家族です。日々の暮らしは穏やかで、夫婦ともに仕事にも子育てにも前向き。けれど、娘の誕生をきっかけに、思いがけず“実家同士の差”を意識するようになりました。

「孫のために使うお金」は平均10万円超 祖父母世代の“支援疲れ”

ソニー生命保険が2024年に実施した「シニアの生活意識調査」によると、この1年間で孫のために出費をしたシニアの平均金額は104,717円。前年よりも3,417円減少しており、物価高騰による家計負担増を受けて「孫消費を抑える」シニアも増えているといいます。

 

支出の内訳としては、「おこづかい・お年玉・お祝い金」(65.6%)が最も多く、「一緒に外食」(52.9%)、「おもちゃ・ゲーム」(38.0%)と続きました。

 

「孫のために何かしてあげたい」という気持ちは変わらなくても、現実的な生活費や年金事情から、思うように支援できない人も少なくありません。

年金とわずかな貯蓄で暮らす母の現実

賢一郎さんの母も、夫の死後は自分の年金と遺族年金を合わせて月におよそ11万円の収入で暮らしています。持ち家のため家賃は不要ですが、光熱費や医療費、さらには最近の物価高を考えると、決して余裕のある暮らしではありません。


「それでも帰省すると、いつも『好きなものを食べなさい』ってご馳走を作ってくれるんです。お正月には娘のためにお年玉も用意してくれている。自分の生活を切り詰めてでも、僕たちをもてなそうとする姿に胸が詰まりました」

 

一方の妻の実家は、都心にマンションを所有し、両親ともに経済的には安定しています。年金だけに頼らざるを得ない母との間には、確かに埋めがたい差があるのかもしれません。

 

“豊かさ”のかたちはひとつではない

「母が泣いた夜、いろんなことを考えました。うちの実家は派手ではありませんが、愛情にあふれていて、何より人とのつながりを大切にしてくれるんです。そういう豊かさもあると思うんです」

そう話す賢一郎さんの言葉に、妻の千織さんも深くうなずきました。

 

「あなたのお母さんの料理や言葉のあたたかさが大好き」と千織さんは微笑みながら話し、続けてこう言ったといいます。「っていうか、私たちももういい年なんだし、いつまでも親に甘えてばかりはいられないわ。お義母さまは遠慮なさるかもしれないけれど、少しでも仕送りというか援助をしたほうがいいんじゃない? あなたをここまで立派に育ててくださったのよ。あなたもしんみりしてないで現実的にお義母さまのことを考えましょう」

 

まさか妻の口からそんな提案が出るとは思ってもみませんでしたが――。「今度は僕たちが母を支えていこうと思います」と、賢一郎さんは静かに決意を口にしました。

 

 

[参考資料]
ソニー生命保険「シニアの生活意識調査」

 

 

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