親からもらうお金は、税金をとられない!?
令和6年のある日、経理部に若手社員のEさんが現れました。そして顔なじみの女性社員Cさんを見つけると、おずおずと切り出しました。
「あのー、去年の10月に消費税のインボイス制度ってのが始まったんですよね。消費税の分、ぼくの給料が上がるなんてことは……ないですよね?」
「……?? お給料は消費税の対象外なので、もともとかかってませんから、インボイス制度が始まって変わることもないですよ。なぜそんなこと聞くんです?」
「やっぱり。このところ物価が上がって、とられる消費税も増えてるじゃないですか。何とかならないのかなあと思って。税金って、とられる一方なんだから」
すると、そこに居合わせたAさんが口をはさみました。
「税金は、とられる一方というわけでもないですよ。たとえば、ご両親や祖父母からお金を贈ってもらっても、贈与税をとられない場合などがあります」
「えっ、税金をとられない!?」Eさん、よくわからないまま喜んでいます。
政府はそのときどきの政策の手段として税金を高くしたり、安くしたりすることがあります。近年、課題とされているのは、高齢者の資産を何とか若年世代に移転できないかという問題です。これに対して税制上の措置がとられています。祖父母が、金融機関に子・孫名義の口座などを開設し、教育資金を一括して拠出した場合に、子・孫ごとに1500万円まで贈与税が非課税とされるのです。
教育費の範囲は、主に学校などへの入学金や授業料とされています。塾や習い事の月謝なども含まれますが、学校以外への支払いは500万円が限度です。この贈与税の非課税措置は、令和8年3月31日まで延長されています。ほぼ同様のしくみで結婚・子育て資金の贈与税が非課税となる制度も利用可能です。こちらは1000万円(結婚の費用は300万円)までを非課税とし、令和9年3月31日までの贈与となっています。
「うーん、子供の教育資金や子育て資金の話はまだだいぶ先だなあ」とEさん。
「じゃあ」と、A税理士が話を続けます。
「住宅取得資金はどうです? これも贈与税非課税になりますよ」
「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に取得する住宅用家屋について、18歳以上の人が直系尊属から、その取得に充てるための金銭の贈与を受けた場合に利用できます。非課税枠は最大1000万円で、耐震・省エネ・バリアフリーの「良質な住宅用家屋」で1000万円、その他の住宅で500万円まで非課税になります(震災特例法の良質な住宅用家屋は1500万円、それ以外の住宅用家屋は1000万円)。
なお、贈与を受ける人の年齢は令和4年から引き下げられて、18歳以上です。以前にあった、中古住宅を購入する場合の築年数に関する要件や、新築住宅の契約締結日に関する要件は廃止されています。住宅の省エネ基準や受贈者の所得、住宅の床面積など細かい適用要件がありますが、「住宅取得等」とあるとおり、同時に取得する敷地、それに居住用家屋の増改築も可です。
「へえー、住宅資金は最高1000万円まで贈与税がかからないんだ」
「それで、マイホームは令和8年の12月までに買うんですか?」Cさんが気になって尋ねました。
「えーと、それはムズいなあ。その前に、いい人見つけて結婚したいかなあ、なんて」
「それじゃ、まだ当分、先の話じゃないですか!?」
梅田 泰宏
梅田公認会計士事務所 所長
税理士法人キャッスルロック・パートナーズ
公認会計士・税理士
