「ふるさと納税」のしくみ
個人住民税は住所地の自治体に納税するので、地方で育ち都市部で就職した人は、成長するまでの行政サービスを地方で受け、住民税は都市部で納めることになります。都市部の自治体はうるおいますが、地方の自治体には子供が成長するまでの行政サービスの費用としての税収が入らないわけです。この状態を少しでも解消しようと設けられているのが「ふるさと納税」の制度です。
令和7年のある日、営業の若手社員Eさんがまた経理部にあらわれました。今度はナンだろう?という顔でCさんが応対します。
「えーと、ぼくの税金をふるさと納税してほしいんですけど」
「は? 何の話ですか?」
「だからあ、ぼくの税金は給料から天引きされてるじゃないですか。それをぼくの実家のあるふるさとに納税してほしいと……」
「ははあ、納税という名前がついてるからカン違いしたのかな?」
そばに居合わせたAさんが話に入ってきました。
「納税という名前だけど、実は税金を納めるんじゃないんだよ。その実体は、所得税の所得控除と住民税の税額控除なんだ」
ふるさと納税は、納税ではなく寄附金控除として扱われます。所得税では、2000円(所得税の寄附金控除の下限)を引いた額が所得金額から控除され、住民税では2000円を引いた額の10%(住民税の所得割の合計)が税額控除されるのです。さらに足りない分は、住民税の特例控除として行なわれ、限度を超えていなければ2000円の自己負担以外は全額控除ということになります。
ただしそのためには、サラリーマンであっても確定申告をしなければなりません。5自治体以下の寄附なら「ふるさと納税ワンストップ特例制度」で確定申告をしない方法も選べます。
所得税分はその年の所得税から控除され、サラリーマンなど源泉徴収されている場合は還付されることもあります。住民税分は翌年の住民税から控除されます。その結果、自己負担の2000円を除いて、追加の負担なしで地方の自治体に寄附ができるというわけです。
「過度な返礼品で問題になった自治体もあるけど、寄附金だから返礼品がもらえるともいえるね。だって、税金納めて返礼品がもらえるってのはヘンでしょ?」
「なるほど。でも、税金納めて返礼品がもらえたらいいなあ。消費税払うとギフト券もらえるとか、所得税納めるとブランド牛肉とか。住民税でカニとか、うなぎ、イクラなんてのもいいな。ですよね?」
Aさん、Cさん、あきれ顔です。
梅田 泰宏
梅田公認会計士事務所 所長
税理士法人キャッスルロック・パートナーズ
公認会計士・税理士
