「頼りになる!」老後も続く“リーダーポジション”にご満悦
「佐藤さん、やっぱり頼りになるね!」
そんな言葉に弱い自分がいました。そう語るのは、 地方のメーカーで営業部長を務め上げた佐藤信夫さん(仮名・66歳)。
体育会系の営業部を牽引し、部下からも上司からも一目置かれる存在でした。面倒見のよさから「困ったときは部長に相談すれば大丈夫」と慕われ、頼られることが誇りでもあったといいます。
しかし、長い会社員人生も65歳でついに終わり。年金受給がスタートすると同時に、仕事のない生活が待っていました。
「本当はもっと働きたかったんですが、再就職もなんだか大変そうでね。残りの人生を充実させるために、一生できる趣味を見つけようと思ったんです」
そして、ずっと憧れていたけれど、なかなか手を出せなかったカメラを本格的に学ぼうと、地域の写真サークルに入会。普段見慣れた風景や街角はカメラを通して見るとまったく違うものになり、新鮮な気持ちに。同年代の仲間との交流も、退職後の寂しさを和らげてくれました。
さらに、会社員時代に培ったまとめ役のスキルも発揮し、撮影会や撮影旅行の調整、飲み会の段取りを進んで引き受けるように。気がつけば「佐藤さんがいると安心だ」と周囲から頼られる存在になっていました。
どこにいても、リーダーのようなポジションになる自分。決して悪い気はしません。それで済めばよかったのですが、会社員時代の調子で、支払いの場面でも「頼れるリーダー」として振舞ってしまいます。
「ここは僕が出すよ」
「まあまあ、いい写真が撮れたお祝いだ」
撮影会でのランチや飲み会、撮影会で使う車のレンタル代やガソリン代。「次はあそこに行こう」とアイディアを出すことも増え、それに伴い「自分が多めに出すから」という場面が増えていきました。最初は遠慮をしていた仲間たちも、いつしかそれが当たり前のようになっていきます。
さらに、 カメラの世界は奥深く、機材もどんどん欲しくなります。新型ボディに高性能レンズ、三脚やバッグも「いい写真のため」と言いながら追加。妻に「また買ったの?」と咎められれば「一生使うんだから」と返す。
そんなある日、佐藤さんは衝撃の出来事を経験することになります。
